“ひたすら早く流す”治水の限界と、縦割り行政から抜け出せない闇
――日本の川の形そのものも、昔とはガラリと変わってしまいました。
蔵治教授
「今の日本の川は、排水路のように人工的になりすぎてしまいました。『大雨が降った時に早く水を海に流そう』という河川管理の法律に基づき、まっすぐで平らな川を作ってきたからです。その結果、川から多様な生息環境が失われ、その面でも生き物が棲みにくくなりました」
「私が今熊本で関わっているプロジェクトでは、専門家たちが『早く流すポリシーから、あえて上流でゆっくり流すポリシーへ変えよう』と提言しています。あらかじめ溢れてもいい場所を用意し、上流で水を吸収させれば、大雨のときに下流への水の流れを遅らせることができます。しかし、国の河川整備の根本的なルールはなかなか変わりません」
――なぜルールの変更が難しいのでしょうか?
蔵治教授
「国も従来型の対策には限界があるとして、2021年に“流域治水”、2024年にはさらに発展させた“流域総合水管理”という新しい考え方を打ち出しました。しかし130年前に作られた治水三法=森林法・河川法・砂防法という3つの法律の基本的な構造を変えることはできていません。法律の名前に象徴されるように森と川はバラバラ。まさに縦割りです。まず自然界の水循環があり、それを踏まえた全体計画を立ててから、実現する手段として個別計画を立てるのが本来あるべき姿です。しかし130年前、水循環の全体を見ずに最初からバラバラに個別対応すると決めてしまい、あまりにも長く続けてきたので、構造を大きく変えるのがとても難しくなっています。法律の構造を変え、それに合わせて組織や予算を変えられないと、せっかく新しい考え方を打ち出しても、机上の空論に終わってしまいます」














