森の“放置”が川を殺す? 「山に木を植えればいい」の限界

――日本の森はかつて大量に植林され、長年放置されてきました。この問題が、川にも悪影響を与えていますか?

蔵治教授

「実は、水循環の観点からは、森と川は完全にセットです。明治政府以来、日本は行政の縦割りで森と川をバラバラに扱ってきましたが、水の源は森に降る雨です」

「水循環の観点からは森と川は完全にセット」

「例えば、よく『環境のために植林しよう』と言われますが、実は過去に植林した木が大きくなってくると、逆に川の水を減らしてしまう懸念があります。木の葉の量が多くなればなるほど、根からたくさん水を吸い込み蒸散します。また木が大きくなればなるほど、葉や幹などに雨水が付着する量も増え、大量の水を蒸発させるからです。川の水の量が減れば水温が上がりやすくなり、冷たい水を好む魚などの生き物にも悪影響が及びます」

森の放置は川にも悪影響を与える

――“植林”よりむしろ「木を切る」ことが川を救うと?

蔵治教授

「山を壊さないように気をつけながら適度に木を切って、賢く利用していくことが、川に十分な水を流し、水温を下げることに繋がる可能性があります。今、全国各地の川で魚など生き物の減少が問題になっていますが、山で林業が行われなくなり、水量が減って水温が上がったことも悪影響を与えているかもしれません。植林というと素晴らしいイメージを私たちは抱きますが、そもそも何のために植えるのか。植えた木が大きくなるまでの50年間、責任をとれるのか。山に木を植えるのは、パフォーマンスになりがちです。今の日本に必要なのは、むしろ適切に木を切り、積極的に使っていくことではないでしょうか」