東京財団政策研究所 柯隆氏:
2021年になってようやく3人目まで産んで構わないと呼びかけたわけですが、産んでいいと言われても生まれて来るわけがないので。人口動態というのは基本的に自然現象なわけですから、手をつけてはいけないものだと。人口のバランスが崩れてしまうと元に戻るには100年かかると思います。

――若い人たちの雇用がなくなって社会不安が広がり、仕事がない、収入がないということになると、ますます結婚する人は減って出産も落ちていく。

東京財団政策研究所 柯隆氏:
コロナ禍の3年間、結婚式を挙げられなかった若者が大勢いる。日本もそうですね。結婚した人も出産の際には病院に入るしかないわけだから、そこで感染するのではないかという心配があって、それも出生率を下げた一つの要因です。一方、高齢化の問題は、中国の場合、介護保険が全く整備されていない社会なので、現役の夫婦が結婚すると、最低4人の高齢者を自分で介護しなければならない。その上、仮に政府の呼びかけに応じて3人の子供を産んだら、育てられるわけがない。特に都市部では、給料に比べると教育コストが日本以上に高いわけです。なおかつ住宅ローンや自動車ローンを抱えているわけですから、非常に深刻な問題だと思います。

――豊かになる前に老いてしまう。

東京財団政策研究所 柯隆氏:
「未富先老」という造語があるのですが、この国は社会が発展する前に急激に高齢化しているわけです。しかも、社会保障がきちんと整備されていない。どうなるかというと、14億の人口の3割の人は見捨てられる可能性が高いのです。

中国は今、大きな岐路に立っている。

(BS-TBS『Bizスクエア』 1月21日放送より)