AIの使用を完全にチェックすることは難しい
今回生成AI対応について質問し、回答があったのは以上の3つの事務局だったことは前述の通りだ。一方で回答を避けた事務局の中には、匿名を条件に生成AIへの懸念について語ったところもある。
このうち、AIを使用した作品を応募不可とするコンテストの事務局は、アーティスト独自の作品を評価する趣旨から応募不可としていると述べた。
「AIを使って作品を作ることも、新しいアートの流れにはなると思っているので、否定することではないのかなと思っています。ただ、私たちのコンテストは、アーティストの独自の発想と技法で作品を表現してもらって、評価して、次のステージに押し上げる役目を持っているので、生成AIの使用を認める考えは今のところありません」
また、仮に募集要項に反して生成AIを使用した作品があった場合は、見分けるのは難しいとの考えを示した。
「応募不可と言っているのに、悪意を持って応募してくる人は、上手くAIを使ってくると思います。例えば、構図をAIに考えてもらうとか、色を考えてもらうこともできます。AIで出力した画像を自分で油絵として描いてきたら、正直なところAIを使っているかどうかはわかりません。AIはいろいろな使い方が出来るので、完全にチェックすることは難しいという印象を持っています」
生成AIの利用を不可としている別のコンテストの事務局も、「0から創造するデザイナー様を応援したい」というコンテストの趣旨に反すると説明。その上で生成AIへの対応について答えにくい理由を吐露した。
「生成AIの問題はコンテストの審査をする上で、どの主催者様にも共通している悩みではないでしょうか。回答するにしても非常にデリケートで扱いが難しく、気軽に回答できないことも(回答を避けた)理由の一つでございます」
小説のコンテストでは、生成AIを補助的、または文章の一部に使用する新たな流れが出てきている。これに対して、アートやイラストでは、生成AIによる作品に特化したコンテストも一部にはあるものの、既存のコンテストの多くは生成AIの利用を認めていない。それだけアートやイラストの分野が、生成AIに取って代わられる脅威に晒されているのかもしれない。
ある事務局からは「AI創作物の著作権は曖昧で、AI創作物を個人の著作物と認めるのかについてはまだまだ議論の余地がある」との指摘もあった。議論が追いつかないほど生成AIが急速に進化していることが、関係者にとって悩ましい状況を作り出している。
「調査情報デジタル」編集部(田中圭太郎)
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。













