生誕100年記念大会における習近平演説の真意
江沢民氏の生誕100年記念大会は、人民大会堂の大ホールに6000人が参集して挙行されました。そこで習近平主席が江沢民氏の功績を讃える重要講話を行いましたが、そこには大きく2つのポイントがありました。そのいずれも、江沢民氏を賞賛しつつ、習近平氏自身がいま成し遂げようとしている施策の正当性を強調する内容だと私は感じました。
1. 上海の「安定維持」への評価と治安強化路線の正当化
1点目は、習近平氏が中国のトップに抜てきされる前、江沢民氏が上海のトップだった時の行動に触れた部分です。
「1989年の春から夏にかけ、我が国で深刻な政治的騒ぎが生じた際、江沢民同志は共産党中央の正しい決定を断固として支持し、実行。そして上海の安定を維持することに努めました」
「1989年の春から夏に生じた深刻な政治的騒ぎ」とは、民主化を求める学生や市民に対して軍隊が発砲した天安門事件を指します。首都・北京での流血とは異なり、中国第二の都市・上海は比較的平穏でした。上海を混乱させなかった功績もあり、江沢民氏は中国のトップに大抜てきされるのですが、この記念大会で改めてその功績が評価されました。
これは中国共産党としての評価であると同時に、習近平氏が最重要視する「治安」「安定」というキーワードと完全に一致します。江沢民氏を讃えることで、安定を最優先し治安強化を進める自らの路線(=習近平路線)の正当性をアピールしたと言えるでしょう。
2. 「党内政治の厳格化」と権力集中の推進
2点目は、習近平主席が「我々は、江沢民同志の揺るぎない政治的信念を学ばなければならない」と述べ、江沢民氏のかつての発言を引き出した部分です。
「共産党の路線や原則、党中央の要求に合致し、明確な判断が下されたならば、迅速かつ力強く実行に移さなければなりません。好機を逃す迷いや遅れは、断じてあってはなりません」
5年に一度の中国共産党大会の開催まであと1年に迫る中、今年10月にはそこへつながる重要会議「共産党中央委員会総会」が開かれます。すでに主要議題が決まっており、その一つが「全面的で厳しい党内政治」です。
これは組織や規律、思想の引き締め、腐敗撲滅を徹底し、共産党の求心力や指導力を強化するという習近平指導部の根幹となる統治方針です。今の中国は権限が習近平氏一人に集中しているため、「共産党の求心力や指導力を強化する」というのは、すなわち「習氏の権威をさらに高めること」に他なりません。つまり、江沢民氏の過去の発言を引用しながら、自分が推し進める厳しい党内統制は正しいのだから「ついて来い」と結びつけているわけです。














