アメリカをしのぐアフリカの「コミコン」の熱気とは

野村:4大コミコンと呼ばれるポップカルチャーの総合イベントについてですが、これはどのようなものなのでしょうか。

中山:アニメエキスポやAFA(Anime Festival Asia)など様々なイベントがありますが、私はコミコンを、それぞれの国にどのアニメが浸透しているかを測る一種のリトマス試験紙のように捉えています。

私はこの10年から15年ほどエンタメの海外事業に携わっていますが、2010年代半ば頃から、ついにアニメが世界のすみずみにいきわたったと感じていました。2013年や2014年頃にまずブラジルで「ブラジルコミコン」のようなものが始まり、約20万人もの来場者を集めるようになりました。わずか数年でアメリカ本国の規模を超えてきたのです。同様にインドでも2015年や2016年頃から始まり、4カ所で合計約20万人が集まるようになりました。

アフリカでアニメが浸透した理由には、2010年代半ばにクランチロールなどの動画配信サービスで見られ始めたのが大きいのでしょう。北アフリカのエジプト、東アフリカのケニア、西アフリカのナイジェリア、および南アフリカなどでコミコンが立ち上がり、現在で6~7年ほどになります。

その中でも南アフリカのヨハネスブルクが特に突出しており、エジプトやケニアが数千人規模であるのに対し、ヨハネスブルクは7万人を超えていたので驚きました。私の中では「インドのデリーよりも多いのではないか」という感覚でした。

今回私は『ONE PIECE』の実写版のサードシーズンが南アフリカで撮影されていることもあり、これは行くべきだと考えました。実際には、7万人規模のヨハネスブルクコミコンのサブイベントとして、南西の希望峰にあるケープタウンで行われる3万人規模の「ケープタウン・コミコン」の3年目に、今回参加してきました。

コンテンツによって異なる流通経路と物価の壁

野村:熱気としては沸騰しているコミコンですが、現地で中山さんはどのような光景をご覧になったのでしょうか。

中山:人々がどの程度深くコンテンツを楽しんでいるのか、最新のアニメが放送されているのか、あるいはどのようなコンテンツが並んでいるのかを詳細に観察しました。その結果、コンテンツごとに流通経路が全く異なっており、全世界のすみずみにまで到達している製品として本当に優れていると感じたのは、ゲームとカードゲームでした。

日本に比べると、Nintendo Switchなどのゲーム本体の価格が約2倍、ゲームソフトも約1.5倍ほどの値段でした。しかし現地の感覚からすると、ゲーム機の金額としては手ごろのようです。カードゲームはさらに比較的安価で、400円から600円程度で購入できます。

一方で、漫画本は『うる星やつら』などが並んでいましたが、1冊が約4,000円から5,000円でした。これは現地の経済水準からするとあり得ない金額です。可処分所得で考えると、私たちの感覚では1冊約8,000円から1万円近くの感覚になります。

野村:少し厳しい金額ですね。

中山:よほど裕福な人が1巻ずつ購入するような状況です。しかも、どこの本屋に行っても巻数が揃っておらず、1巻、7巻、8巻といったようにバラバラに置かれていました。

野村:なるほど、そのような状況なのですね。

中山:漫画は十分に届いておらず、アクセスも困難で非常に高価です。また、グッズについても基本的には海賊版しか流通していないような状態でした。玩具についても、ベイブレードなどがあるものの、やはり欧米(特にイギリス)の流通が強い印象です。そのため、ハムリーズやトイザらスといった店舗があり、そこではイギリスやアメリカに向けて展開された日本のIPのコラボ商品が南アフリカでも販売されています。

日本企業はインド市場にも十分に展開できていませんが、アフリカ大陸となると、ライセンスを保有している会社がサブライセンスを行い、さらにその先でサブライセンスを重ねているため、販売元自体が「そこで売れていること」を全く認識していないケースがほとんどだと思います。そうした環境の中でも、安価な価格でしっかりと届けようとしているのがゲームやカードゲームです。それに続くのが漫画ですが、これらはまだ流通としては遠い存在です。