星野、長嶋両監督が当時語っていたこと
三木谷オーナーは本当に負けず嫌いで、すぐに結果を求める性格らしい。ご自身が、そうやって成功を収めてきた自信もあるのだろう。球団のフロント陣も昔から何よりもオーナーの目を気にしていた。確かにサッカー界では日常的に起こる監督の交代劇だが、野球界ではそれがすぐに成績に結びつくかは疑問だ。
星野監督も就任1年目は5位、翌年が4位だった。その頃によくこんな話を聞いた。「負けると必ずと言っていいほど、オーナーから連絡がある。『なぜ、あの場面でこの作戦なのか。あの選手を使わずに、この選手を使え』と言ってくる。こちらは限られた戦力で、育てながら勝っていかないといけない。野球は短期で結果が出るなんてことはない。巨大戦力を持つ球団とは違うんだから、長い目で見ないと。まあ、俺は適当に聞き流してはいるけどね」
当時の星野監督の指導はシンプルだった。日本一シーズンに24勝0敗の不敗神話を作った田中将大(現巨人)と助っ人外国人の現役メジャー2人、アンドリュー・ジョーンズとケーシー・マギーの3人以外は、「社会人に毛が生えた程度。まだ本物のプロ野球選手ではない」が口癖だった。
そして、重要視していたのが四球へのこだわりだ。「投手には『ここは打たれてもいいから勝負しろ。逃げるな』というと四球を出す。『ここは歩かせろ(四球にしろ)』と指示すると、真ん中に投げて打たれる。言ったことと反対のことをする」と怒っていた。まだ、申告敬遠の制度のなかった時代だ。
打者にも、「指示は『ストライクを打て。ボールは打つな』」だった。試合の安打数と被安打数の話をする時も、それに四死球の数を足して解説してくれた。「きのうはうちが6安打だったが、四死球がないから6安打のまま。投手は4安打に抑えたが、四死球が6つもあった。10本ヒットを打たれたのと同じ。これでは勝てんわな」となる。
楽天の前には長嶋茂雄監督時代の巨人も担当したが、その時に長嶋監督は、「プロ野球の監督は細かい指導をする必要はない。それはコーチの役目。監督は『この監督を、どうしても胴上げしたい』と思わせること。それが出来れば、優勝出来ます」と話していた。
星野監督の3年目はまさにそんな空気感があった。求めていることはプロとしては当然出来なければならない内容だと思うが、コーチ、選手が一体となって監督の指示を全うすることに全力を尽くしていた。その結果が日本シリーズ最終第7戦で、9回に田中が巨人打線を抑えて日本一になった。その時、最初に監督に抱き着いたのが、地元東北出身選手として星野監督が育てあげ、その年レギュラーで活躍した銀次だった。2人の目にはともに涙が滲んでいた。
昔を懐かしんでばかりでも意味がないが、今回の就任会見時に三木谷オーナーは、「中長期的な戦略に基づいて取り組み、改革をしていく」と宣言した。
期間は明らかにならなかったが、複数年契約を結んだという吉井新監督は、「まずは『勝つぞ』という強い気持ち。精神論になるが、そこをもう一度、再確認していただいて取り組んでいく。キーマンは 全員。若い選手もベテランも全員でやっていきたい。選手だけでなくコーチ、スタッフ含めて全員でやっていく」と話した。
新監督が、この掲げた方針を達成できるまでに何年かかるか。強力な支援を公言したオーナーがそれまで我慢できるか。セ・パ12球団で最も歴史の浅い球団の浮沈は、そこにかかっていると思う。
(竹園隆浩/スポーツライター)














