絶望を超えたエースの進化と覚悟

新村とともにチームの軸を担うエース・德丸凛空(とくまる りく)もまた
あの夏を原点に進化を遂げた男だ。

入学当初の德丸は、決してずば抜けた存在ではなかった。体の線は細く、本人も「あまり食事に興味がなくて…」と漏らすほど食も細かった。それでも、王者と渡り合うための体力強化に向け、吐き気と戦いながら必死に白飯をかき込み、己の肉体を鍛え上げてきた。

德丸の真骨頂は、打者の内角を果敢に攻め立てる強気な姿勢と、それを可能にする精緻なコントロールにある。昨秋の中国大会では全試合に登板し、驚異の防御率0点台をマーク。中国地区制覇、そして33年ぶりのセンバツへとチームを導く原動力となった。

その圧倒的な投球の裏にあったのは、地道な体作りと、己の個性を愚直に磨き続けた日々だ。

エースとして夏の甲子園を誓う德丸凛空

「あの経験があったから今の自分がある」

1年前の夏、マウンドで味わった絶望を糧に立ち上がった左腕。その目の奥には、過酷な挫折を乗り越えた者だけが持つ静かな強さが宿っている。