2つの驚きと首脳会談の舞台裏

さて、今回の首脳会談で、取材団には2つの驚きがあった。

1つは首脳会談後に発表された共同声明がわずか2ページ(英語版)しかなかったことだ。去年5月のバイデン大統領訪問時に出された共同声明は10ページ。その前年の菅前総理のワシントン訪問時の共同声明も付属文書をあわせて10ページだったのに比べると、今回の共同声明はずいぶん短いものだった。

外務省幹部に取材をすると、その舞台裏が見えてきた。

実は今回、首脳会談に向けた交渉の中で、日本側から「共同声明は安全保障に関する点に絞って1ページにまとめよう」と提案したのだという。何しろ日米首脳はわずか8か月前に新型コロナ対策や気候変動問題などを含む総括的な共同声明を出したばかり。同じような総括的な声明を出すよりも、安全保障面に絞ることで今回の訪問の意義をより引き立たせることを狙ったのだ。

アメリカ側との調整の結果、結果的に1ページではなく2ページになったのだが、比較的簡潔な共同声明になった裏にはこうした動きがあった。

アメリカが示した「大統領の時間」

もう1つの驚きは共同会見が行われなかったことだ。機密文書の問題に直面するバイデン大統領が記者の前に出るのを嫌がったのではないか、との憶測も流れたため、舞台裏を取材してみた。

日本政府関係者によると、今回、アメリカ側が日本側に用意した「バイデン大統領の時間」は「2時間」しかなかったという。実際、岸田総理がホワイトハウスに到着したのが11時15分。そして、昼食会が終了したのが13時35分で、計2時間20分のホワイトハウス滞在だった。

ちなみに、2021年4月に菅前総理がワシントンでバイデン大統領と会談した際には、首脳会談と共同会見で「3時間半」の日程が組まれている。今回はこの「2時間」の制約の中で、日本政府は首脳間の対話の時間をできるだけ多くとることを重視し、共同会見を行わないという判断に至ったのだという。

もっとも、アメリカ側が日本側に「2時間」しか時間を与えなかったのは、共同会見を設定しにくくする狙いがあっただろう。岸田総理との会談を終えると、バイデン大統領はまもなくホワイトハウスを出て、デラウェア州の静養先に移動した。スケジュール的には「3時間」でも「4時間」でも時間を割くのは可能だったはずだ。