背中に手を回し…
首相に就任して1年3か月あまり。ようやく岸田総理が念願のワシントン訪問を実現した。取材して印象に残ったのはバイデン氏の丁寧なもてなしぶりだった。
岸田総理がホワイトハウスに到着した際には、バイデン氏自らが外に出て岸田総理を出迎えた。これはウクライナのゼレンスキー大統領が訪米した時など、首脳訪問の中でもより特別な時にだけ行われる対応だ。
大統領の執務室「オーバル・オフィス」に案内する際には、カメラの前でバイデン大統領が右腕を大きく岸田総理の背中に回しながら歩き、言葉を交わした。

日本政府関係者はその姿に「友達じゃないとできないしぐさだ。両首脳の個人的な関係がしっかり築かれていることを示す瞬間だった」と話した。
その後、「テタテ」と呼ばれる1対1の会談を45分間、昼食をとりながらの拡大会合を約1時間行った。同席者によると、会話が弾み、終了時間になって秘書が何度か次の予定を知らせに来たものの、バイデン大統領はかまわずにしゃべり続けたという。見送りの際も時間をかけて、岸田総理だけでなく日本側の1人1人と握手をしたそうだ。
同席者は「今まで何回か総理とバイデン大統領の会談や立ち話に立ち会ったが、今回が一番よかった」と現場の雰囲気を振り返った。
絶妙のタイミング
訪米のタイミングが遅れたものの、結果として岸田総理は防衛力強化の方針決定という大きな成果をもって訪れることができた。
今回の会談でバイデン大統領は日本の方針を強く支持し、「両国はかつてないほど緊密だ。アメリカは日本との同盟に全面的に、徹底的に、完全にコミットしていく」と強調した。旧統一教会問題への対応や閣僚の相次ぐ辞任などで支持率が低迷する岸田政権だが、新たな安全保障戦略へのアメリカからの支持の取り付けは外交面での大きな得点だ。
一方、中国を最大の懸案と位置付け、同盟強化で対応する方針を示しているバイデン政権にとっても、日本の新たな方針は大きな成果となる。バイデン大統領は機密文書問題でのメディアや野党共和党の批判をしばし忘れ、同盟強化に向けた岸田総理との会話を楽しんだことだろう。
