「頭のネジが1本ぶっ飛んでいないと」
「リベロに必要な能力は絶対的な“メンタルの強さ”と、圧倒的な“我慢強さ”なんです」
小川はそう話す。
「リベロは、コートの中で後ろの守備位置から『相手のトスワークの意図を完全に読んで、自分のレシーブのイメージを周りの選手と共有していく』という、すごく緻密な作業が常に求められるポジション。大事なゲームになればなるほど、本当にミリ単位の繊細さ、1本のレシーブを正確にセッターに返さなきゃいけない、もの凄くプレッシャーのかかるポジションでもある。だけど、バレーって絶対に人間に“ミス”が起こるスポーツ。どれだけ練習した世界トップのリベロであっても、サーブレシーブを直接エースで取られるミスをしたり、スパイクを弾いて後ろに落とすミスは、試合中に絶対に起こり得る。人間って、コートの中で何かマイナスなミスがあると、例えば、アタッカーの選手だったら、スパイクをミスしたとしても、次のラリーで豪快なスパイクを決めたり、あるいは強いサーブでサービスエースを取ったりして、自分の手で点数をもぎ取れるから、そこで一つ気持ちがリセットできる。だけど、リベロには、“自分で直接点数を取ってミスを帳消しにする”という選択肢が、構造上コートの中に“一切存在しない”。1本もったいないレシーブミスをして、次の1本をセッターに完璧にAパスで返したとしても、そのパスがまず、その後のアタッカーの攻撃によって100%得点になるかどうかは分からない。自分のパスミスによって『相手に直接得点された』っていうあの強烈な罪悪感、マイナスの精神的なダメージの方が、リベロにとっては圧倒的に強い。極限のプレッシャーの中で耐えられる“我慢強さ”を持ち合わせ、経験を積んできたトップのリベロのように、ミスを犯した瞬間に『あ、今のミスはもう終わったことだからしょうがないだろう。俺のせいじゃないし』っていう、ラフな気持ちにコートの上で瞬時になれるかっていうと普通の生真面目な人間は絶対になれない。そこはもう、努力の領域じゃなくて、その選手の持っている根本的な“性格”もあるな、って僕は思っている。僕個人の持論としては、『リベロをやる人間は、“自己中心的”な性格の方が絶対にいい。』と思っている。どこかで“頭のネジが1本ぶっ飛んでいないとトップでやっていけない”」
それは、自分勝手であれという意味ではない。
コートの中で自分の心を守り、次の一球へ切り替えるための“思考の技術”でもある。

















