「判断のコールをするのがリベロ」

世界の打球を受け続けることは、技術だけではなく、コート全体を見る視野も磨いていく。その視点は、やがてリベロという役割そのものへとつながっていく。
すべての積み重ねは、ロス五輪という一点へ静かに収束していく。

「自分が成長して、いろんな視点からバレーボールの展開を見ていくので、指示が今まで以上に増えている。この時はもっとこういうヘルプをしなきゃいけないとか、今みんなが求めてる情報を素早く判断して指示する。実は前衛の選手はネットと近くて、相手と距離が近い分、広く見ることができない。その分、僕は後ろにいるので、そこの情報は、いち早く伝えなきゃいけない」

ネーションズリーグ イラン戦

瞬間瞬間で求められる緻密な組み立て。

「例えば相手のポジショニングで、日本のスパイクに対して、深いところに構えてるチームがたくさんある。ブロックが高い場合、真ん中が空く。そういう時に空いているところを改めて指示したり、ラリー中であれば、相手のトスが離れた時に、ブロックを飛ぶのか飛ばないのか、すごく迷うところ。その判断のコールをするのがリベロなんです」

トータルで守備をコーディネートしていく。小川が見ている世界は、私たちが想像するよりもずっと速い。

その土台になっているものがある。

「『日本人はフィジカルが無いから、海外のパワーバレーには絶対にレシーブでパワー負けするよ』と、ネガティブに言われていた時期があったけれど、実際にこうしてシニアのフル代表になって世界トップと試合をしてみたら、『いや、パワー負けなんか全くしないし、普通に全部拾えるじゃん!』って。“世界相手でも、身体が小さくたってレシーブは完璧に通用するんだ”っていう絶対的な自信を持てるようになった。“相手のコースを読むインテリジェンス”があれば、世界トップの球だって何の問題もなく正面で拾えるっていうのを、今のこの日本代表チームに自分がフィットして、コートの上で体現して証明できている」

小川のアイデンティティでもある。

男子日本代表の坂梨朋彦コーチは小川をこう評する。

「駆け引きの上手さを持ち合わせる。相手のサーブを研究してトスが上がった瞬間に来るところがわかる、“特殊リベロ”。リスクは負うがかなりのカバーができ、スパイカーの負担を減らすことができる」

“特殊リベロ”。その異質さは、プレーだけではない。