“次の1球”にすべてを懸ける
頭の中で“都合の良い言い訳(逃げ道)”を自分で作ることだってある。
「サーブを直接エースに取られてミスった時に、『今のサーブは相手の打球のブレ方が尋常ではなかったから、世界中の誰がレシーブに入っても絶対に上げられない球だった。だから今の失点は俺のせいじゃない、相手が凄すぎただけだ』なんて、頭の中で瞬時に言い訳を作って処理する。これもメンタルを維持するためには本当に大事なこと」
もちろん、それを口にすることはない。
あくまで自分の心を立て直すためだけの、頭の中の作業だ。
常に前だけを向いて、ポジティブに。
リベロの世界では、言葉より結果が信頼を生む。
「リベロの信用っていうのは、『口じゃなくて、“次の1本のディグの結果”だけで示すもんだ』と思っている」
「ミスをした直後の次の過酷な状況下において、自分がコートの雰囲気をどうコントロールして、自分の背中で引っ張る形を作るか。次のラリーで相手のエースの強烈なスパイクをパッと正面で綺麗に拾った時に、ちゃんと『ほらね、俺の言った通り、俺のレシーブゾーンに打ってきたら絶対に上がるでしょ?』っていう最高の説得力を周りに見せつけられるか。 そこで初めて、スパイカーやセッターからの本物の“信頼”を得ることができる」
ミスを消す術はない。
だからこそ、次の一球にすべてを懸ける。
その繰り返しが、小川智大というリベロを世界の舞台へ押し上げてきた。
「僕は、桁違いに“ミスをした後の次の1本が強い”。そこの切り替えのスピードがめちゃくちゃ早い。自分がコートの中で1本レシーブをミスって、周りのアタッカーの選手たちが気を遣って『小川、どんまい! 次次!』って寄ってきたりするのも、僕は手でパッと制して、あ、全然大丈夫だから。気にしないで離れて』みたいな感じ。頭の中では次のラリーのポジショニングのことしか考えていない。『絶対に、2本連続でレシーブミスはしないぞ』っていうことだけを胸に誓って構えて。自分のこれまでのバレーキャリアの確率としては“90%以上”は、2本続けてミスをすることがない。それだけ強気で開き直れるメンタルの太さがあるからこそ、日本のリベロとして、今のこの世界トップの場所に残り続けているんだと思う」
「ミスをしても、僕の場合は『クソッ、今のサーブめちゃくちゃムカつくわ!』っていう怒りの感情に変わる。イライラやムカつきのネガティブな感情を、全部次の1本を拾うための“破壊的なエネルギー(力)”に変えなきゃと思って構えている。『次も思いっきり俺のところに打ってこいよ!』と強気に、すべての怒りを次のサーブレシーブやディグへのエネルギーに変えることが一番大事だと思っている。コートの中の逆境を、自分のエネルギーに変えるエゴの力が、リベロには絶対に必要な能力だと感じている」
ミスの先にある一球だけが、自分を証明する。
一球、一球。
その積み重ねが、落選さえも、自分だけのキャリアへと変えていく。
小川智大は、今日も次の一球に向かっている。

















