海洋調査や水産業の現場で導入が進む「水中ドローン」。しかし、産業用の機体は数十万から数百万円と高額なのが現状です。そんな中、いま注目を集めている一台があります。

水道用の塩ビパイプがむき出しのボディ。釣りなどで浮きとして使われるフロート。実はこれ、わずか3万円で製作された水中ドローンです。

開発したのは、長崎総合科学大学松岡和彦教授の研究室。松岡教授は、民間の造船所で14年間、船の設計に携わってきました。水の中では、ゆっくりと──しかし安定して進みます。
その秘密は、船舶工学を応用した構造です。

長崎総合科学大学 松岡和彦教授:
「重量物であるモーターが下で、浮きが上になっているんで、このバランスだとですね、海中では絶対ひっくり返ったりはしないと。そこは船舶工学の基礎のところを利用してですね」

長崎総合科学大学 松岡和彦教授:「はい。潜航」

ドローン前方のカメラ映像を見ながら、人が操作します。ケースは100円ショップのプラスチックケースです。
スイッチは、たった3つ。(中央スイッチ→上下スクリュー)真ん中で浮上・潜航。(左スイッチ→左スクリュー回転)左スイッチで右旋回。(右スイッチ→右スクリュー)右スイッチで左へ。(左右同時→前進する水中映像)そして両方押せば前進・後進します。
自動航行機能や、障害物を避けるセンサーなどはあえて搭載していません。目指したのは、高性能ではなく、現場で毎日使えることでした。

Q.3万円のドローンを開発しようとしたきっかけは?
長崎総合科学大学 松岡和彦教授:
「(養殖業者が)高いのを買って持ってるんだと」
「養殖いけすの周りには色んなロープとかですね、様々なものが沈んでいるので、それに引っかかって上がってこないととても嫌だと。」
「(回収が)危なくなったらもう諦めていいと、そういう値段はおいくらですか?とお伺いしたら、皆さん3万円ぐらいと、おっしゃっていただいたので、じゃ3万円という金額設定のなかで、できるだけ高性能なものを目指そうと」

養殖業では、網の破れや魚の状態など、海の中を日常的に確認します。潜水士が海に入ることも少なくありません。
長崎総合科学大学 松岡和彦教授:
「観察をする時に事前にパソコンを用意したりとか、いろんなケーブルをたくさん繋いだりとか、事前準備を必要とせずに、もう現場に行ったらすぐ使えると」
ドローンを使うことで、船やいけすの上から、安全に海中を確認できるようになります。

長崎総合科学大学 松岡和彦教授:
「潜水士さんたちも今高齢化と、人数が不足というがもう目前に迫っておりますので。潜水士さんたちの安全をロボットが、後ろからね、観察しながら見ると。最小限の潜水士さんと陸上からのロボット支援という形でチームを組んだらどうかとか」

実際の海でも、高性能な産業用の水中ドローンと同じ条件で比較・検証しました。
浮消波堤の係留索などを撮影し、操作のしやすさや撮影性能を比べました。3万円ながら、水深50メートルまで潜ることができ、日常的な点検では、高価な機体にも引けを取らない性能が確認されました。
さらに、活用の場は、海だけではありません。
長崎総合科学大学 松岡和彦教授:
「全然違う分野で、ビルのメンテナンスをやられる方がですね、ビルの屋上にある貯水槽の清掃点検というところに水中ロボットを投入して、どのくらい汚れてるか把握してから掃除の準備をすることに使えると」

この水中ドローンは、教育の現場にも広がっています。
長崎市伊王島などで体験教室を開き、子どもたちが自分で組み立て、海の中を観察しています。

長崎総合科学大学 松岡和彦教授:
「長崎は海洋県で、洋上風力などの新しい今課題にも取り組まなきゃいけないと。そこを支えるやっぱり技術者を育てなきゃいけないので、技術者の卵になってくれる子供たちに、今のうちから教育をして、海の技術に興味を、持ってもらって、例えば将来は水中ロボットオペレーターとかですね、そういったことにチャレンジしてほしいなと」
「最先端は高価」。そんな常識を引き算の発想で覆した3万円の水中ドローン。
長崎の水産業、そして未来の技術者たちの可能性を広げようとしています。














