体重別に完全移行した国際柔道連盟(IJF)のルールで行われているオリンピック、世界選手権は現在、無差別の試合はない。女子の場合、最も重い78㎏超級(78㎏以上なら何㎏でもOK)を除くと、試合をする2人の体重差は最大で8㎏以内。さらにルールも本戦で決まらない場合は、時間無制限の延長となり、どちらかがポイントを奪うか、片方、もしくは双方が反則負けになるまで続く形になっている。

それがこの大会では体重差は関係ないので、普通なら体格の大きい選手が有利。特に腕力の劣る女子では、組み手で相手を制御するのが難しいため、スタミナ面と合わせて男子以上に体重差は勝利に直結する。だが、元々の柔道の試合には延長はない。この大会は国際大会とは違う本来の本戦のみ旗判定方式を採用。明確な技のポイントを奪えなくても、本戦の戦い方次第で勝つことが出来る。

加えて昨年からは、現在IJFルールでは禁止となった相手の足への手での攻撃、防御が認められた。これで相手より下になる可能性の高い小さい選手は、相手の攻撃を受ける前に攻めることが出来、返し技も狙える。古賀も「足を持てることになったので、全日本に挑戦してみたいと思い、2年連続で出場出来た。この舞台で出来るというのは、柔道人生で嬉しいこと。全てを味わい、楽しもうという気持ちで臨んだ」と話した。

笑顔がはじけたのは、やはり父の話題になった時だ。「お父さんの全日本選手権の時と技も似ている」と言われて、「見ている人はそう思うかもしれないが、自分的には意識せず、出せる技で勝負しようと思った。(父の全日本は)決勝で小川直也さん(当時130㎏)に投げられたところ(一本負け)だけ、映像で見たことがある。自分は準々決勝でああいう大きな相手に勝ったので、自分の方が上ですかね」と笑った。

だが、父は実際には初戦で135㎏の相手を下すと、準々決勝はこの時の大会最重量だった155㎏の巨漢選手にこの日の娘と同じ足への攻撃で小内巻き込みなどを仕掛けて勝っている。それを告げられると、「いや、その試合は見ていないのでわかりません。ただ、大きい対戦相手にできる技は限られているので、自然と同じようになったのかな、と思います」と答えた。

朝比奈戦を振り返ってもらうと、闘志だけでなく冷静な試合運びが勝機を生んだのが分かった。「組まれたら投げられる。少し、怖さはあったが、自分のペースでやれた。結構、相手の動きをみることが出来ていたと思います。(延長のない)5分間だけだから、最後にきつくなるのは考えずに、最初から技を出していって動きを止めない。それが判定勝ちにつながったのかな」。まさに作戦通りだったのだろう。

昨年結婚した25歳は、今年限りでの現役引退を決意しており、大会後に全日本柔道連盟から国際大会の強化指定選手の内示を受けたが、断った。指導する元日本代表女子監督でパーク24女子監督の園田隆二氏は、「力を入れるところと、スピードを出すために抜くところのセンスを持っている。それは、教えて出来るものではない。さすが、古賀さんの娘だなと思う」と目を細めた。

3人の子どもがいずれも父の後を追って柔道を志した古賀家で、生前の父は「長男(颯人=神奈川・慶応高教、28歳)は真面目。次男(玄暉=旭化成、27歳)はセンスがある。一番下の娘(ひより)は甘えん坊だが、自分を持っている」と話していた。

現在、シニアの最高峰レベルの大会での無差別を実施しているのは、世界中でこの男女の全日本選手権のみだ。体格差もルールも、柔道本来の形を残す大舞台で、受け継がれた「三四郎魂」が見る者全てを魅了した。

(竹園隆浩/スポーツライター)