震災と原発事故からまもなく12年。
政府は13日、福島第一原発にたまり続ける処理水の海への放出時期について、「今年の春から夏ごろ」に始める方針を決定しました。

松野官房長官「海洋放出に向けて、その前提としている安全性の確保と風評対策の徹底に万全を期すとともに、漁業者を始めとする地元関係者のご懸念に耳を傾けつつ、これらの対策の内容について丁寧な説明を尽くしていく」

政府は、13日に開かれた関係閣僚会議で、福島第一原発の処理水について、放出設備の工事や原子力規制委員会による検査などを経て、「今年春から夏ごろ」に海に放出する方針を決定しました。

福島第一原発にたまり続ける処理水。原発構内にあるおよそ1000基のタンクは、満杯に近づいています。

政府は、おととし4月に「処理水」を国の基準値以下の濃度に薄め、2年後をめどに海に放出する基本方針を決めていました。

この基本方針を受けて東京電力では、去年8月から放出で使う海底トンネルの工事を行い、今年春ごろの完成を目指し作業を進めています。

今回初めて処理水の具体的な放出時期が示されたことについて県民からは、様々な声が聞かれました。

福島市の高校生「漁業関係者への影響というのはやはり少なからず出るものだと思うので、排出しなきゃいけないっていうのはわかりますけど、すごくバランスが難しい問題だと思います」

喜多方市民・80代「私はいいと思いますよ。海に流さなきゃあと流すところないじゃない。貯め放題貯めたってなんの意味もないでしょ」

一方で、いわき市の漁業関係者は・・・

いわき市の漁師「今までやってきた試験操業をふまえて今だって本操業に向けてやっているのに、漁業者の意見を聞かないで、俺らはあくまで反対だ。死活問題に関わってくるからね」

いわき市の仲買人「(国に求めるのは)しっかりとした対策。ようやく形ができた中で今度処理水の問題では今までの努力が水の泡になっちゃう」

政府は、風評被害への対策として、処理水の放出によって何らかの風評被害を受けた場合には全国の漁業者への支援として新たに500億円の基金を創設し、漁場の開拓にかかわる経費や燃料費などを支援していくとしています。

東京電力・小早川智明社長「まだまだ(地元の)理解がしっかり進んでるという状況にはないと思うので、様々なご不安ご懸念にしっかりと向き合って丁寧に説明を尽くし1人でも多くのご理解を醸成できるように努めたい」

処理水の海洋放出について、政府は「関係者の理解なしに海洋放出はしない」としていますが、地元の漁業関係者からは風評への不安・懸念の声や「海洋放出」という結論ありきで話が進んでいることに疑問の声が聞かれました。