「水と油」が強さを生んだ

長くセカストを率いてきたゲオの専務は、あるインタビューで「ゲオとセカストは、180度思想の違う会社だ」と語っています。ゲオは、レジのシステム化を進め、効率を極めてきた「仕組みの会社」。一方のセカストは、マニュアルよりも現場の経験でノウハウを積み上げてきた「目利きの会社」。まさに水と油です。

しかし、この組み合わせこそが、先ほどの謎への答えでした。目利きという人力頼みの商売は、そのままでは多店舗展開に限界があります。そこにゲオの仕組みの力が加わったのです。ゲオは創業期から基幹システムを内製してきた会社で、いまは100人を超えるITエンジニアを抱えています。セカストの買い取り支援システムは、商品情報を入力すると、過去の膨大な売買データと相場から参考価格が表示される仕組みになっている。買取実績は年間7000万点に及びます。職人技だった目利きを、新人でも一定の水準で再現できる「仕組み」に変えたわけです。

ちなみに新社名「セカンドリテイリング」は、英語で中古を意味する「セカンドハンド」と小売りの「リテイリング」を組み合わせたものです。1986年にレンタルビデオ店から始まった会社が、創業40年の節目に、看板を「リユースの会社」へと掛け替えます。なかなか感慨深い節目です。

日本式買い取りが、海外で武器になった

そして、この強さが最もはっきり表れているのが海外進出です。セカストの海外店舗は2026年3月末で148店。アメリカは2018年のロサンゼルス出店から55店まで増え、2030年には100店を目指します。米国の売上はこの3年で約6倍の119億円。台湾も50店から100店へ、タイの法人は売上が前の期の3.8倍と、すさまじい勢いです。

なぜ、日本のリユース店が海外で勝てるのか。理由は大きく3つあります。1つ目は、主力の「古着」という商材です。本やCDと違って言語に縛られず、家電と違って電圧や規格の壁もない。しかも世界の中古アパレル市場は、2030年に約60兆円、新品の2倍のペースで伸びるという予測もあり、追い風が吹いています。

2つ目は、欧米では「服を気持ちよくお金に換えられる店」がそもそも存在しなかったことです。欧米では、着なくなった服は売るものではなく、慈善団体に「寄付する」のが長年の習慣でした。そこにセカストは、持ち込まれた品物を基本的に全部見て、一点ずつ値段をつける日本式を持ち込みます。象徴的なのが、店頭に並べにくい服でも1着1円、アメリカでは1点1セントで引き取る仕組み。金額はゼロに近くても、お客さんが受け取るのは「拒絶されなかった」という感覚です。そしてこの「全部買います」は、優しさであると同時に、いい品物を集めるための仕入れ戦略でもあります。

3つ目が、それを支える業務システムです。データが参考価格を示し、現地のスタッフが「なぜこの値段なのか」を説明する。機械的な一律ルールの買い取りに慣れていた海外のお客さんに、この「説明できる買い取り」が新鮮に映っているそうです。