■ファーストリテイリングが年収“最大40%”引き上げへ 給料UPのワケ

山本恵里伽キャスター:
食品などの物価上昇を受けて、賃上げへの期待が高まる中、前向きな話が入ってきています。

ユニクロなどを展開するファーストリテイリングは、本社やユニクロなどで働く正社員など約8400人を対象に、3月から年収を数%から約40%引き上げると発表しました。例えば、新入社員の初任給25万5000円から30万円に。そして入社2年目などで就任する新人店長は、月29万円から39万円に引き上げるということです。こうした全面的な賃上げは2000年前後に現在の制度を導入して以降、初めてだということです。

小川彩佳キャスター:
数%から40%の引き上げというのは、かなり大幅なアップですけれども、なぜユニクロは賃金アップを実現できるのでしょうか?

大和証券チーフエコノミスト 末廣徹さん:
円安の恩恵を受けやすい製造業だったというところで、賃上げの原資があるっていうのは大きいと思います。あとプラスしてグローバル企業ですので、今回ファーストリテイリングさんも言ってるんですけど、海外の労働コストと比べて、日本人の労働コストが相対的に安いので、そこを埋めるような形になるというふうに言ってます。簡単に言うと、日本人に多少コストを払ってでも、水準が低いのでコスパよくいい人材を集められるっていう、去年流行ったような日本人が安くなっているっていう、そういった側面もグローバル企業だったので感じやすくて、こういう決断に至ったという面も大きいのかなと思います。

小川キャスター:
日本人が安くなっているということも改めて、突きつけられますね。とはいえ、ユニクロのような企業が率先して賃上げを発表していくというのは、賃上げムードを牽引していくという意味でも大きいことですよね。

末廣徹さん:
足元では円安は収まってきているんですけども、最低でも半年ぐらいまで物価高続きますので、それに対抗するぐらいの賃上げが行えるかどうか、これが日本経済にとって非常に重要なので、ファーストリテイリングさんみたいな企業がどんどん出てくるかどうかが、今後注目されるところです。

■来年度、中小企業の“8割”が賃上げを実施予定 賃上げムードは続くのか?

山本キャスター:
また、この賃上げを巡っては他にも、サントリーホールディングスは6%程度の賃上げを検討。日本生命は7%引き上げる方針を発表しています。その一方で、日本の労働者の7割以上が勤めている中小企業はというと、東京商工リサーチによりますと、来年度、賃上げを実施予定だとしている中小企業は8割を超えているんです。末廣さんは、この数字をどのようにご覧になってますか。

末廣徹さん:
賃上げムード自体は広がってるんだというふうに思います。ただ、8割という数字を額面通り受け取っていいかというのは少し疑問もあるところで、コロナ禍で、かなり、賞与とかそういったところは絞っていた状態から、ようやく経済再開で業績も上がっていくということなんで、ほっといても賃上げの動きがあったんではないか、という部分もあります。

先ほど出てきたいくつかの大企業と比べると、中小企業の方が円安のデメリットを受けやすかったというふうに考えると、全体的な数字、平均値としてどれぐらい上がるかというと、1%とかそれぐらいかなと私は個人的に予想しています。

小川キャスター:
実際に中小企業が十分な賃上げを行っていく上で、何が必要になってきますか?

末廣徹さん:
本来であれば、業績が良くなって、賃金が上がって、いい人材を確保して、新しいイノベーションが生まれて業績が上がる。こういうサイクルが通常なんですが、今回は予期せぬインフレもあって、賃上げからスタートしていくということになりますので、いい人材が新しいビジネスを産んで、いい循環に回っていくかどうかが重要なんだと思います。

小川キャスター:
そのためには、中小企業も新しくチャレンジしていくということですね。

末廣徹さん:
新しい業績を生むような人材を見つけるっていう後押しに、賃上げはなっていくと思いますので、いい循環に入っていくといいなということかなと思います。