1/100秒の攻防
野球の塁間は27.431メートル。いつもなら、味方投手の球威や相手打者の雰囲気を見て、ポジションを変えていた。しかしこの日は、朝の慌ただしさのせいか、「まぁ、いいか」と、ベースより約1メートル前寄りの位置に構えていた。
その油断を、現代野球の「スピード」は容赦なく突いてきた。初回、先頭打者への、わずか2球目だった。近年のハイテクバットが放った打球は、体感で「時速130〜140キロ前後」とも思える凶暴な弾丸ライナーとなって、私のド正面を襲った。
白球が、26メートルの距離を駆け抜ける時間は、わずか0.6秒強。50歳の肉体は、確かに反応していた。私はグローブを「下から上へ」と突き上げ、必死に打球の軌道を遮ろうとした。かつての現役時代なら、そこで白球はグローブの中に収まっていたはずだった。
だが、進化を遂げた高機能バットの初速は、私の反応速度をコンマ数秒だけ上回った。グローブのわずか上をすり抜けたボールが、私の顔面に直撃した。
脳が激しく揺れ、視界は一瞬で暗転した。














