スターバックスとの共通点。日本が守る「サードプレイス」の価値
comugi:この「価値を定義し磨き続けるコンセプト」は、実は私たちの身近な別の事例にも共通点があります。国内ナンバーワンのコーヒーチェーン、スターバックスです。
野村:少しイメージが異なるようにも思えますが、どのような共通点があるのでしょうか。
comugi:スターバックスは自らをコーヒーショップではなく「サードプレイス(第三の場所)」であると定義しています。自宅でも職場でもない、その間にある心地よい場所。米国では戦後、ローカルコミュニティが希薄化しましたが、そこにスターバックスがサードプレイスを提供したことで大ヒットしました。しかし現在、米国のスターバックスは苦戦を強いられています。一方で日本のスターバックスは過去最高益を更新し続けている。この差はどこにあるのか。
野村:米国のスターバックスで何が起きているのですか?
comugi:米国のスターバックスは、実は売上の70%がモバイル注文とドライブスルーになってしまいました。これでは「サードプレイス」として機能していません。単なる「効率的なコーヒーショップ」へと変質してしまい、価格競争力のある新興チェーンに顧客を奪われています。店内の設備も、ゆったりしたソファから効率重視のスツールへと変わってしまいました。
野村:日本はどうなのでしょうか。
comugi:日本はサードプレイス需要が依然として高く維持されています。ドトールのように短時間立ち寄る場所としてだけでなく、ゆったりと過ごせる場所として定着しました。日本特有のホスピタリティやおもてなしの心とも合致し、絶好調を維持しています。この「定義された価値(サードプレイス)を頑なに守り、磨き続ける」構造は、ユニクロのケースと非常に似ていると感じます。
時代が変わっても「変わらない価値」を磨き続ける
comugi:日本が持つ特性が、これらの事例にはっきりと表れています。ユニクロの「LifeWear」も、少しずつ改良を重ねるトヨタの「カイゼン」やすり合わせの文化に通じるものがあります。30年間、愚直に継続してきたことが、ようやく時代のニーズと合流したのです。スターバックスジャパンも同様です。米国本社の経営方針が変わっても、国内では「サードプレイス」という価値に向き合い、守り、改良し続けてきました。
野村:継続性ですね。原則は崩さず、解像度を高めて改良を続けていくことが、結果として大きな差になる。
comugi:AIが登場した現代、最適化や効率化、テイクアウトのようなビジネススタイルはAIが得意とする領域です。しかし、そうした時代だからこそ「変わらない価値を育み続けること」が、逆説的に重要性を増してくるのではないでしょうか。急激に変化を求めるよりも、今ある価値を徹底的に磨き上げること。これこそが日本の得意分野であり、ユニクロの30年の蓄積が今、改めて世界で脚光を浴びている理由なのだというのが私の結論です。
<聞き手・野村高文>
Podcastプロデューサー・編集者。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て独立し、現在はPodcast Studio Chronicle代表。毎週月曜日の朝6時に配信しているTBS Podcast「東京ビジネスハブ」のパーソナリティを務める。














