本来のプロセスとは逆転…はらむ新たな“曖昧さ”創出の恐れ

さらに、より根本的な問題として「立法プロセスの逆転」を指摘する。

通常、法律は実際に起きている問題や根拠となる「立法事実」があり、それを解決するために制定への議論が始まる。しかし今回は「まず法制化する」という目的が先にあり、それに対する根拠や保護すべき利益をあとからつけていく形になっているというのだ。「通常とは違うプロセスを踏んでいることも特徴」と島本記者は指摘する。

実際、差し迫った問題が起きているのかという点について、島本記者は「ほとんど発生していない」と明言した。他人の国旗を損壊すれば器物損壊罪が適用されうるし、今の社会で国旗損壊が問題化している状況はないという。

この法案が成立した場合、逆に国旗に触れる機会が多い人々が萎縮したり、生成AIによる創作物を対象外にすることで悪意ある拡散の抜け道になりかねないとの懸念も取材の中で聞かれた。「結果として一人一人が日本の国旗に対して距離が遠くなってしまうことは、法案成立に向けて動いている人たちの狙いからは外れる」という声もある。

法案は6月前半の提出を経て今国会での成立を目指す。曖昧さを解消するために作られようとしているこの法律が、新たな曖昧さと社会的な問いを生み出そうとしている。

島本記者は「曖昧さを解消したいと思って作ろうとしているのに、逆にそれがまた新たな曖昧さを生んでしまっている。逆効果が生まれないことを願いたいが、現時点ではモヤモヤが膨らんでいく感覚がある」と指摘。

国旗を大切に思う国民感情を守るために作られるこの法律が、逆に国旗に触れることへの心理的負担を生み、国旗を掲げる人が減るという「逆効果」につながらないか。法案の中身に加え、その運用のあり方が問われることになる。