重視するのは「オプティクス」か

中国訪問に先立つ4月下旬から5月上旬。筆者はワシントンで外交関係者やシンクタンクの専門家らに米中会談の見通しの取材を重ねていた。今年最大の外交日程のひとつと位置付けられてきた北京訪問だが、関係者は揃って「大きな成果は出ないだろう」と指摘していた。背景には、アメリカが始めたイランでの戦闘の出口が見えないことがあったが、具体的な根拠としては、以下の2点があげられた。

・トランプ大統領はイランで軍事作戦中。それを理由に3月に予定していた中国訪問の日程を延期したが、当時と比べてもイラン情勢に進展はみられない。

・成果が期待できる分野として貿易・通商関連があるが、中国との交渉を担うベッセント財務長官はイランへの対応に追われ、事前調整が深まっている様子がない(実際、ベッセント氏と何立峰副首相による最後の事前調整はトランプ氏が北京に到着する当日、13日にソウルで行われた)。

そうした状況下で、複数の専門家から聞かれたのが「トランプ政権が重視するのは『オプティクス』だろう」との見方だ。

Optics=オプティクスとは、直訳すれば「光学」を意味するが、政治的な用語としては「見栄え」や「視覚的な印象」を指す。首脳外交の文脈では、会談や関連行事での「見え方」がどのようなものになるのか、という意味を持つ。

外交に限らず、トランプ大統領や政権のスタッフは公務の際に「テレビでどのように映るか」「SNSで目を引く写真が撮れるか」といった「映え(ばえ)」を重視しているが、専門家らが指摘していたのは、トランプ氏にとって米中首脳会談すら具体的な成果を求める機会ではなく、「映える」写真が撮れれば十分なのではないか、ということだ。