かつて「日本一」に輝いた思い出の地・氷見で新たな夢を追い、3年前、福岡のチームから移籍するタイミングで第一子にも恵まれた庄司選手。しかし、熱い志を抱いてやってきた彼を待ち受けていた容赦ない現実とは。
(第4話・総集編/取材:島津有希)

約5000人に1人の指定難病「先天性横隔膜ヘルニア」を抱え生まれた娘

富山ドリームスとして氷見に来たのは2023年4月のこと。しかし、そのタイミングはちょうど第一子が生まれる時期と重なっていた。しかも、お腹の中にいる段階から判明していたことがあった。

「先天性横隔膜ヘルニアという難病に指定されている病気で。私が調べた中では5000人に1人くらいで発生する難病だったんですよね」

            生まれたばかりの長女・陽葵ちゃん

先天性横隔膜ヘルニアとは、横隔膜に生まれつき穴が開いており、胃や腸が胸腔内に出て肺や心臓を圧迫する病気だ。命に関わる、極めて深刻な状態での誕生だった。

大阪と氷見の離れた生活…「ハンドボールも全部やめて大阪に帰ろうかと」

妻は大阪の病院で子どもに付き添い、看病を続けた。一方の庄司選手は、ドリームスに来て仕事がある以上、氷見を離れるわけにはいかなかった。

                庄司選手の公式xより

大阪と氷見。物理的に離れた場所で、二人はそれぞれの役割を果たし続けた。心が折れそうになった瞬間も、一度や二度ではなかったはずだ。

「ハンドボールも全部やめて、やりたいことあって富山に来たけど全部やめて、大阪帰って働こうかとも考えましたけど」

すべてを諦めて帰阪するという選択肢が、脳裏をよぎった。それは決して弱さではなく、父親として、夫として、当然の揺らぎだった。

長女・陽葵ちゃんの2回目の手術前

窮地を救った妻の言葉「大丈夫。私が何とかするから」

そのとき、妻・優唯さんの言葉が庄司選手を救った。

                右側が妻・優唯さん

「大丈夫。私が何とかするから。私が頑張るから、自分の好きなことやっていいよ。応援するから」

「ハンドボールで怪我をして半年間くらいリハビリしたとき、本当に心折れそうなときに、妻が『大丈夫、大丈夫』と励ましてくれますし、試合で結果が出なかったときも『大丈夫、大丈夫』ってずっと笑顔で支えてくれた。妻の力は私にとって、とても大きいですね」

1年越しに叶った家族全員での生活

長い治療を経て約1年越しにようやく家族全員での共同生活が実現した。

                 庄司選手公式xより

庄司選手には、1年前に次女の桜都ちゃんが誕生し娘が2人になった。
古民家を取材する日、長女・陽葵ちゃん(3)も来ていた。

筆者は、SNS上で病気を抱えているお子さんがいることを知っていたが、多くの管につながれていた状態から今元気に駆け回る姿に感動したことを率直に伝えた。

すると庄司選手は「手術のあとでここが凹んでんねんな」と胃の当たりをさすった。

ひなたちゃんは「触ってもいいよ」と言ってくれたので触れてみたところ明らかに子どものこぶし1つ分ほどくぼみができているように感じた。

わずか3歳にして、どれほど大掛かりな治療を乗り越えてきたのだろうか。

「パパ大好き!こーんくらい!!」  

民宿の縁側で庄司選手が「パパ好き?」と問いかけると、陽葵ちゃんは「パパ大好き」と答える。

「どれくらい?」に「こーんくらい!」と両手を大きく開いて反応する。そのやり取りに、庄司選手の顔もコート上とは違う父親の表情になった。

陽葵ちゃんに「民宿の家は好き?」と聞くと、大きくうなずきながら「大好き」と言い、親子で民宿の中を駆け回った。そのひと言が、庄司選手にとっての何よりの励みになっているに違いない。