AI時代の「ジュニア育成」と「教育のパラダイムシフト」
野村:業界全体が活性化している一方で、懸念もあります。AIがジュニアコンサルタントの仕事を代替してしまった場合、若手はどうやって育つのでしょうか。かつてのような「下積みの苦労」の中で学んでいた領域が消えてしまう気がします。
渡辺:それは非常に鋭く、かつ深刻な問題です。長期的には、5人でやっていた仕事をAIを使いこなす1人が担当するようになり、ピラミッド構造の下部は狭まっていくでしょう。
野村:育成の機会が奪われるということですね。
渡辺:ただ、私は「育成の形自体がAIによって進化する」という仮説を持っています。これまでは現場で失敗しながら覚えていた暗黙知の領域を、AIによる「仮想プロジェクト」やシミュレーション研修で代替できるようになるかもしれません。
野村:AIを教育ツールとして使うのですね。
渡辺:AIがクライアント役になり、コンサルタントの表情やコミュニケーション、提案内容を解析してフィードバックする。いわば、暗黙知を形式知化し、育成スピードを飛躍的に高める可能性を秘めています。
不完全な世界で、最後に問われる「人間の意思決定」
野村:お話を伺っていると、AIの進化によってコンサルタントの仕事はより高度な「意思決定のサポート」へと集約されていくように感じます。
渡辺:その通りです。ここで一つ、将棋界の例が参考になります。AIが提示する「最善手」が必ずしも人間に指しこなせるとは限りません。AIの手は「一歩間違えると奈落の底に落ちる」ような、非常にリスクの高い「崖の上の正解」であることも多いのです。
野村:ビジネスの世界でも同じことがいえそうですね。
渡辺:はい。AIは現時点の情報に基づいた「論理的な損得」を提示してくれますが、その答えに責任を取ってはくれません。また、その会社が大切にしている価値観や、組織の文脈に合っているかどうかも判断できません。
野村:不完全な情報の中で、最後に「こちらで行こう」と決断するのは人間であると。
渡辺:そうです。どれだけテクノロジーが進んでも、最終的な「責任」と「価値観に基づく決断」は人間に委ねられます。だからこそ、経営者は信頼できるパートナーである人間(コンサルタント)と対話し、悩みを共有したいというニーズを持ち続けるのです。
野村:AIの先を行くのではなく、AIが示す損得を理解した上で、自分たちの価値観に従って意思決定する。その橋渡しこそが、これからのコンサルタント、そしてビジネスリーダーに求められる役割なのですね。
渡辺:おっしゃる通りです。コンサル業界の変化は激しいですが、根底にある「人間ならではの役割」は、むしろその重要性を増していくのではないかと考えています。
<聞き手・野村高文>
Podcastプロデューサー・編集者。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループ、NewsPicksを経て独立し、現在はPodcast Studio Chronicle代表。毎週月曜日の朝6時に配信しているTBS Podcast「東京ビジネスハブ」のパーソナリティを務める。














