「安全と費用」のバランスと学校・現場のコミュニケーション
先ほど紹介した小嶺さんや黒田さんのように、監督や保護者が免許を取ってバスを運転するのは大変ご苦労なことで、一方で危険も伴うのですが、その背景に焦点を当てますと、学校や教育委員会が現場に甘えている構図が浮かび上がります。
しっかり状況を把握して管理をすると、安全な観光バスを使えということになり、お金が足りないなら断念せざるを得ないということになります。それでは遠征ができなくなってしまう、チームを強くする機会を減らしてしまうということから、監督や保護者らが免許を取ってハンドルを握ることになって、学校などはそこに任せてしまっているわけです。
身近なところでも、私がかつて指導していた少年サッカーでは、大会会場まで保護者が車を出してくれるのは本当に助かりました。バスや電車を乗り継いで言うことを聞かない子供を移動させるのは大変ですし、会場が駅やバス停から近いとは限りませんので。
ただ、保護者からは「もし事故を起こしたら、善意で車を出した親が賠償責任などを負うことになりますね」と言われたことがあります。結局私も甘えていたわけです。他のチームでは「本来なら小型であっても貸し切りバスで行くべきで、お金を払うのが嫌なら大会に参加しなければいい」という極論も出ていたといいます。
文部科学省は今回の事故を受けて、部活の遠征について何らかの対策を出す方針ですが、結局は「安全と費用のバランス」にならざるを得ません。そうなると、費用面で遠征をあきらめることも増えますし、貸し切りバスを使うことが増えたとしても人手不足の中ですから、貸し切りバス側にも注文が増えれば受けられないという事態も考えられます。
事故のリスクを全くゼロにはできない中で、限られた費用の中で遠征をするのであれば、せめて今回の事故のように「もっと確認しておけば良かった」ということのないように、学校と現場がコミュニケーションを取っていくしかありません。完全な対応策はありませんので、保護者も含めて学校と現場が協力して遠征について考えていかなければならないと思います。
◎山本修司

1962年大分県別府市出身。86年に毎日新聞入社。東京本社社会部長・西部本社編集局長を経て、19年にはオリンピック・パラリンピック室長に就任。22年から西部本社代表、24年から毎日新聞出版・代表取締役社長。














