今、再審制度を見直す刑事訴訟法の改正案をめぐり、自民党内では怒号が飛び交う前例のない事態となっている。最大の焦点は「検察の抗告権」の扱い。全面禁止を求める有志の議員と、認めることはできないと主張する法務省側。その背景、それぞれの主張の根拠、そして落としどころはどこにあるのかを、最前線で取材を続ける記者2人が解説する。

「1ミリも私たちの言い分を聞かない」 なぜ法案は紛糾するのか

「何も1ミリもね、私たちの言い分聞かないじゃないですか」
「ほとんどの議員が抗告禁止って言っているにもかかわらず、それを全く無視している」

今月6日、自民党本部で刑事訴訟法の改正案を議論する会議が始まる前、稲田朋美議員の怒号が響き渡った。

いま自民党内で、三審制の裁判を経て刑が確定した後にえん罪が疑われる場合、裁判のやり直しを求める「再審」の制度を見直す法案をめぐり、政府案と、それに反対する自民党の有志議員との間で激しい議論が続いている。

注目すべきは、この議論が閣議決定前の事前審査であるということ。TBS政治部で与党担当の青木孝仁記者は「与野党が特に重要と位置付けた法案である『重要広範議案』が、閣議決定前の段階でこれだけ揉めるのは異例のこと」だと指摘する。

最大の焦点は、検察官の「抗告」の扱いだ。

抗告とは、裁判所が出した決定に不服を申し立てる手続きのことだ。現在の再審制度では、地裁が裁判のやり直しの開始を決定しても、検察が抗告すれば高裁で改めて審理され、高裁が支持しても検察が再び抗告すれば最高裁まで手続きが続く。

稲田氏をはじめ、有志の議員らは検察官の抗告を「全面禁止」するよう強く求めているが、政府案との考え方には隔たりがある。この溝が議論を紛糾させている。