妻子殺害の動機 裁判で言葉にできなかった
量刑が最大の焦点となった一審の裁判員裁判。義母から逃れることが最大の動機だったが、なぜ妻と息子まで殺害したかについては、奥本死刑囚自身も当初、その理由を言葉にして説明することができないまま裁判に突入してしまった。結果論となってしまうが一審の前に心理鑑定をしていれば「死刑を免れた可能性がある」と、黒原さんは自責の念に駆られている。
「本来は専門家である臨床心理士が、奥本が示した客観的事実をもとに心の動きを解析しなければなりません。しかし私はそれを奥本自身に無理やりやらせようとしてしまいました。致命的なミスです」
奥本死刑囚は妻と息子まで殺害した理由を追及されると「わからない」という回答を繰り返し、裁判員らに「反省していない」という印象を強く与える結果になった。
2010年12月、宮崎地裁は奥本死刑囚に死刑判決を言い渡した。判決理由で「動機の詳細を『わからない』と繰り返すなど、内省の深まりは乏しい」と指摘している。
奥本死刑囚が退廷した後も、法廷に残された黒原さんは傷心のあまり、しばらく席を立つことができないでいた。
青年の死刑、なんとか回避したかった
黒原弁護士は1973年に生まれ、30歳にして7回目の司法試験に合格した。そんな彼の原動力となっているのは、女手一つで育ててくれた母からの「弱い立場の人や困っている人を率先して助けてあげなさい」という言葉だった。
とりわけ恵まれない境遇から罪を犯してしまった被疑者には裁判までに徹底的に向き合って反省させ、再犯を防ぐために家族にも受け止めてもらう。被疑者を弁護するだけでなく、罪を償い、更生し、社会で生きていけるようサポートすることに、刑事弁護のやりがいを感じるようになった。
このような信条の黒原さんだからこそ、奥本章寛という1人の青年の死刑をなんとか回避し、更生や償いの機会を残してあげたかったのだ。「目の前で自分の依頼人が立たされて、死刑を言い渡されるんです。これ以上のショックはありませんでした」

















