アイディアは、大叔母の「寂しそうな顔」から
発明のきっかけは、慎也さんが施設を訪ねた時の、大叔母の表情だった。
「バリアフリーでキレイな部屋だったんですけど、何かどことなく寂しげな感じがして。聞いてみたら、趣味の畑仕事ができない、という話だったんです」
高齢者施設では、一般的な土には菌が含まれるため、免疫力の低い入居者が感染症を引き起こすリスクがある。
そのため多くの施設で園芸が禁止されている。
2013年のお盆のころ、午前4時。慎也さんは突然アイディアが頭に降ってきたと言う。

「無機物の鉱物と無機肥料を組み合わせたら、無菌の人工土壌ができるんじゃないか」
すぐに机に向かい、頭の中のビジョンをノートに描いた。
そのアイディアを持ち込んだのが、父親の荒磯恒久会長(77)の部屋だった。
北大で研究者だった父は、かつてイノベーション育成のセミナーを各地で行っていた人物だ。
「自分でベンチャーをやらずに若者に語り続けるのは、生き方として落ち度があるんじゃないか」と思っていた父は、息子の話を聞き、自宅のガレージを明け渡した。
「こんな10年後もガレージを使うとは考えていなかった」と会長は笑う。
父の車は、今も外に野ざらしのままだ。














