“今年のチーム”でどこまで戦えるか

今回はどのようなレース展開が考えられるのか。1~3区は前回と同じメンバーになったが、1年前は2区のベンソンでトップに立った。1区で20秒以上引き離されなければ、今回も2区でトップ争いに加わることができる。
3区の梶谷は前回は区間16位で6位に後退してしまったが、今季は11月に10000mで28分02秒27の自己新で走っている。相手次第ではあるが、前回よりも踏みとどまる可能性は大きい。そうなれば4区の照井が充実しているだけに、「入賞圏内で地元(太田市)入りする」(奥谷監督)という展開に持ち込めるだろう。
だが5区以降で3位以内を突っ走った前回の再現は、簡単にできるものではない。SUBARUの選手もスタッフも、それは理解している。
前回は4区の清水が区間8位で3位に上がり、5区の照井が区間3位で2位に浮上。6区の小山司(30)が区間2位、7区の口町が区間3位で2位の位置をキープした。奥谷監督は「実力以上を出せた」という言葉をためらわずに使っている。

「前回がサプライズだったのは事実です。優勝候補チームが上手くいかなかったのに対し、ウチは全てが上手くいった。2位という結果がひとり歩きしないように、地に足をつけて入賞を重ねていきたい」

実際のところ、清水はシーズン後半に調子を落としている。チームの良さを継続して行うのは当然として、今季のチームでどんな走りができるか、という考え方で臨む部分もある。

今季のチームという点では、6区の長田が新戦力だ。東海大から入社したルーキーで、ベテラン小山の後任という形になる。10年連続6区区間賞選手を出したチームが優勝しているように、選手層の厚さが現れるこの区間はポイントになる。

「自分でメニューを立てるやり方で、なかなか結果を出せませんでしたが、夏合宿はしっかりできて、12月の甲佐10マイルでやっと結果(46分27秒で17位。チーム内2位)を出すことができました。大学まではケガが多かったので、まずはケガをしないことを、奥谷監督や色々な方からアドバイスをいただきました。練習はスタミナを鍛えるメニューに多少変えたと思います」

SUBARUはスピード重視のメニューを多くする選手もいるので、やり方は本当に選手個々で異なる。長田は「将来的にはマラソンを」という希望を持ち、元世界陸上マラソン日本代表の奥谷監督の指導するSUBARUに入った。
「強い先輩方が多いチームですが、なるべく食らいついて、1年目から駅伝メンバーに入る」という強い気持ちで取り組んだ結果が現れている。

奥谷監督も「12人のエントリーメンバーで選考練習も行いました。小山が入れなかったり、10000m27分台を持つ川田(裕也、24)が入れなかったりしましたが、現状で一番良いオーダーが組めたと思います」と手応えを感じている。

SUBARUでは選手たちが自発的にデータ班を作り、ニューイヤー駅伝のペース配分などもデータベース化している。向かい風となる5、6、7区では、前半を遅く入っても後半で上げられた選手が区間上位に入っている。「初めて走る長田には良い指標になる」と奥谷監督。
それに対して7区の口町は前回も区間3位と結果を残した。「唯一、他チームの選手に勝てるのが向かい風の走りです」と冗談めかして話すが、奥谷監督は間違いなくその部分に期待している。
前回の2位は、2年前の予選落ちに選手たちが奮起したことが最大要因だった。今季のチーム、選手たちが「どんな気持ちを持つかで結果は変わってくる」と奥谷監督は見ている。

「目標は8位以内ですが、決して8位でいい、という話ではありません。堅実に入賞を続けることを重視しますが、1個でも上の順位を狙う姿勢も重要です。それだけの準備はしてきました」
SUBARUが2年連続で、サプライズを起こす可能性がある。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)