インド・太平洋、沖縄の海にも生息する、体長わずか7センチの小魚がいる。名前はキンメモドキ。岩陰やサンゴの隙間に数万匹の群れをつくり、夜になると餌を求めて活発に泳ぎ回る、ごく普通の魚だ。しかしこの魚は、生物学の常識を覆す“秘密の能力”を隠し持っている。自分では作れない光を、他の生き物から「盗んで」発光しているのだ。

消化されずに光り続ける謎の酵素

キンメモドキは、餌として海を漂うウミホタル(Cypridina noctiluca)を捕食する。ウミホタルが持つ発光酵素「ルシフェラーゼ」を体内に取り込み、腹側の発光器官に蓄積。そこから数か月以上にわたって青白い光を放ち続ける。これが「盗タンパク質(kleptoprotein)」と呼ばれる現象だ。

通常、口から摂取したタンパク質は胃腸の消化酵素によってアミノ酸へと分解され、機能を失う。ところがキンメモドキの体内では、ルシフェラーゼが消化されることなく無傷のまま生き残り、発光能力を保ち続ける。

「他の生物のタンパク質を取り込んで発光する能力は、キンメモドキでしか知られていない独自の能力です」

研究を率いる東北大学学際科学フロンティア研究所の別所-上原学助教は語る。