リバイバル上映が人気に~「Filmarks」が仕掛ける<体験価値>~

ただ、1月の劇場公開作品をカウントした際、もう一つ大きく伸びた分野がリバイバル上映だったのを思い出した。2024年は13本だったのが、2026年は26本に倍増していたのだ。

リバイバル上映は昔からある。2010年代には「午前10時の映画祭」の上映が始まった。空いている午前中を埋める、シニア層向けの懐かしい旧作上映企画は今も続いている。

ただ近年のリバイバル急増はまた別の新しい潮流だ。古今東西のあらゆる映画をユーザーが評価する「Filmarks(フィルマークス)」というサービスがある。私も、どの映画を見るかの参考に頻繁に使う。

そのFilmarksが2021年にリバイバル事業を始めていた。倍増の震源地がここにある。その仕掛け人、Filmarksを運営する株式会社つみきの渡辺順也氏に取材した。

上映特典の小型ポスターを前に楽しそうに語る渡辺順也氏

「Filmarksの膨大なユーザーデータから、どの作品がどれだけの人に愛されているかがわかります。特に人気のある作品を上映してみたらチケットは即完売しました。手応えを感じて事業として継続・拡大して今に至ります」

Filmarksで評価の高い作品をリバイバル上映すれば大勢観にくる。当たり前のようで、初めて取り組む事業だけに具現化には苦労もあったようだ。だが渡辺氏の話からとめどなくこぼれてくる映画愛が、苦労を乗り越える原動力となったのだろう。とにかく楽しそうに語る。

「配信されている作品も多いので、どうすればわざわざ映画館に来てくれるかを徹底的に考える必要がありました。その答えが<体験価値>を高めることでした」

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をマーティがタイムスリップした10月26日に上映したり、『秒速5センチメートル』のタイトルの由来である桜の花びらの落下速度にちなんで、桜前線に合わせて上映時期を北上させたりした。渡辺氏の言う<体験価値>が映画館に人を呼ぶキーワードのようだ。

上映特典の数々…右上は「パトレイバー」の許可証風ムビチケ、右下は『エターナル・サンシャイン』に出てくるカード

入場者特典の充実も<体験価値>に繋がっている。90年代名作洋画シリーズでは、上映作品の小型ポスターを制作。『海がきこえる』では映画の時代設定を意識したテレフォンカード風のムビチケ、『時をかける少女』では、主人公のタイムリープの残り数を示すタトゥーシールをわざわざ作った。

作品が好きだからこそ、こうしたアイテムも欲しくなる、だから映画館に来てくれる。さらに、アイテムを入手した人はSNSに投稿する。それを見た人が映画館に行きたくなる。<体験価値>のスパイラルだ。

「コロナ禍が明け、音楽ではフェスなどのリアルイベントが大盛況になりました。同じように映画も『配信でも観られるけど、大きなスクリーンで観る体験は違うよね』という感覚が生まれたのだと思います。私たちの事業も、1回きりの上映から1週間、2週間と期間を延ばし、上映館も100館を超えるほど広がりました」

Filmarksが開拓した新しいリバイバル市場。参入するプレイヤーも増えて、先述の「倍増」をもたらした。映画館で<体験価値>を味わう人が増えている。