希林さんから也哉子さんに…
是枝裕和監督:いろんな見方ができると思うんだけど、僕が改めて見て思ったのは、テレビってこういうことしないんだよ。基本的に昔作ったものを見直さないし。見る側も特に、見直さないものなので。先輩が作ったものを若いディレクターがもう一度見て再解釈していく訳じゃないですか。そうすると放送の当時見えていたものと違うものが見えてくるというのがすごく大事になってくるんですけど、そういう読み直しが作り手の側にあり、描かれている対象の中でも起きている。いろんなものが形を変えながら受け渡されていく。それが何重にも起きている、これには。その大きな一つが希林さんと也哉子さん。お母さんが取り組んだ仕事を也哉子さんが取り組む。そういう風に見ていくと、この番組は多層的に見えてくる。いろんなものが見えてくると感じました。

内田也哉子さん:ありがとうございます。私はこの回は特に一番印象的だったのは佐喜眞美術館の丸木夫妻の絵。無言館とご縁があったのは、母の縁もあったが、言葉では語りつくせないアート、絵というものに自分の中で対流が始まる、その体験が好きというのがあるので、戦没画学生慰霊美術館という冠は重々しいんですけど、ひとたび館に足を踏み入れると青春美術館なんです。10代、20代で無心に描いたもの。恋人、風景、純粋に自分の命を輝かせるために描いたものが残っている。丸木夫妻の戦争の絵は、重く苦しいものではあるんですけど、小学1年生の子がこの絵を見て怖いと思ってお母さんに触れて、お母さんが温かいと気づく。これをポケットに入れて持ち帰ろう、なんて、絵だからできること。これが佐喜眞美術館に行ったことでフルサークルになった。いろんな方と出会って種をいただいた回でした。戦争の悲惨さもそうだし、もうちょっと引いた形のアートを介して発酵した感じ、多面的に学んだ感じでこれをどうやって返していったらいいんだろう。ドキュメンタリーって難しいなと思いました。この旅を通して、いただいた種を、ここから私がどうやって育てていくか。もしかしたら数年後に、ものすごく強い想いがあふれ出ちゃってみんなにびっくりされちゃうかもしれないし。
是枝裕和監督:新しい扉が開いたかもって、最後に言っていたからこの後どうなるか。開いた扉を、也哉子さんが何を受け止めて、渡していくのか問われていく。














