日本には原油高と円安のダブルパンチ
エネルギー輸入大国で、原油の中東依存が高い日本には、より大きな打撃です。今や、先進国の中でもっとも物価上昇率が高くなっているだけに、さらなるインフレ加速のダメージは、甚大です。ガソリン暫定税率の廃止や電気ガス料金補助といった政策努力は吹っ飛んでしまうかもしれません。
かつて、世界的なリスクが高まった際には、円が買われた時期もありますが、財政悪化懸念が表面化している今の円に、そんな勢いは全くありません。現に、為替市場では「有事のドル買い」だけに光があたる状況で、円は一時1ドル158円台へと、ジリジリ円安が進んでいます。エネルギー価格の高騰に円安が加われば、インフレ圧力という点で、ダブルパンチです。
長いトンネルの末に、ようやく物価の落ち着きと実質賃金プラス化の光が見え始めた時期だけに、今回の危機はあまりに悪いタイミングです。タイミングという意味では、春闘の最終局面の時期という点でも心配です。エネルギー価格の高騰というコスト負担が出現する中で、経営者が「もう少し様子を見たい」と思えば、賃上げへの「最後の一押し」の力が減衰しかねません。1円でも上積みしなければならない中で、賃上げの足を引っ張りかねません。
金融政策の難易度上がる
スタグフレーションのリスクは、日本こそ、大きいでしょう。エネルギー価格の影響が大きい国であるばかりか、これまでのグローバル危機でも明らかなように、通商立国として、世界的な景気減速の波を、もろに被ってしまう国だからです。
デフレの時代に、日本の金融政策は、エネルギー価格急騰局面では、緩和で景気を下支えすることに重心を置いてきました。一時的な価格の上昇はあってもともかく、基本的には、物価全般を心配する必要がなかったからです。しかし、今回は全く、違います。インフレが心配なところに、危機が襲ってくるからです。景気下支えに傾きすぎると、インフレの火が燃え上がることにもなりかねません。
日銀の植田総裁は、国会で4日、今回の危機の物価への影響について、「交易条件の悪化によって、景気や基調的な物価に下押し圧力となる可能性がある」と述べる一方で、「家計や企業の中長期的な予想インフレ率の上昇につながり、基調的な物価上昇率を押し上げる可能性もある」と、先行きを見通す難しさを吐露しました。
これまでは、早期の追加利上げを巡って、日銀執行部と高市総理大臣の綱引きが話題になっていましたが、もはや、そうした単純な構図で金融政策を語る局面から、状況は大きく変わったと見るべきでしょう。日本経済の現状と先行きをどう見るか、プロ集団としての日銀と、稀代の専門家である植田総裁の力量が、まさに問われる局面です。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)














