2年半前、異業種であるゲーム事業に参入したTBSテレビ。これまでは自社の番組をゲーム化したタイトルをリリースしてきたが、今回、ゲーム大手の「スクウェア・エニックス(スクエニ)」と組んで本格的なオンライン対戦ゲームをローンチした。そこにはどんな狙いがあるのか、「TBS GAMES」の時松隆吉氏(ゲーム開発室長)に話を聞いた。

「TBS GAMES」の誕生とグループ戦略「EDGE」

Meta社のゲーム機「Meta Quest」のヘッドマウントディスプレイを装着すると、眼前にテレビで見慣れたあのアスレチック・フィールドが出現、コントローラーを握った手を勢いよく振って突進するも…あっけなく池にドボン!

「SASUKE VR」のプレ一画面 開発はゲーム会社「MyDearest」が担当

取材中に筆者がトライさせてもらったのは、約29年にわたるTBSテレビの人気番組「SASUKE」をバーチャル体験できるゲーム「SASUKE VR」。去年12月、日本に加え、アメリカやイギリスなどの海外でも「NINJA WARRIOR VR」として発売された。「Meta Quest」のユーザー数が多い海外を中心に、上手にステージをクリアしていくプレイヤー動画がYouTubeなどに投稿され、盛り上がりを見せているという。

これをゲーム会社と手を組んで世に送り出したのが「TBS GAMES」。つまりテレビ局自らが番組をゲーム化するなどの異業種ビジネスに挑戦しているのだ。

TBSテレビが「TBS GAMES」ブランドを掲げてゲーム事業に参入したのは、2023年7月。以来、「アイ・アム・冒険少年 超・脱出島」や「あたまおしりゲーム」など10近いゲームタイトルをリリースしている。

「アイ・アム・冒険少年 超・脱出島」のプレー画面 
「あたまおしりゲーム」のプレー画面    

このゲーム事業のベースとなっているのが、TBSが2021年に打ち出した「TBSグループ VISION2030」の中核戦略である「EDGE」だ。

「EDGE」=Expand Digital Global Experienceは、「コンテンツ価値の最大化を目指す拡張戦略」の意で、「デジタル分野」「海外市場」「エクスペリエンス(ライブ&ライフスタイルなど体験するリアル事業)」の3分野をコンテンツ拡張の最重点領域と位置付けている。この戦略に沿う形でTBSが海外市場も見据えて「アニメ」と並び力を入れているのが「ゲーム」というわけだ。

去年7月には、体制を強化するため、プラットフォームビジネス局内に「ゲーム開発室」が新設された。初代の室長となった時松隆吉氏はゲーム事業参入の具体的な狙いについてこう語る。

「狙いは『放送以外でのIP(注)展開』という文脈の中で、ゲームを単なる収益手段ではなく、『次のコンテンツビジネスの柱』として育てることにあると思っています。

テレビ局には、番組やキャラクターなど『強力なコンテンツIPの保有』、番組に加えSNSやイベントなどを通じた『マスへのリーチ力』、『社内外のクリエイターとの接点』、『映画・ドラマ・アニメなど映像制作や舞台・イベント制作のノウハウ』といった他業界にはない資産とリソースがあります。

また、『ゲーム発の番組化』なども今後視野に入れていくことで<テレビ×ゲーム>のクロスメディア戦略を両輪で回していくことが、TBSだからこそ挑戦できる領域であり、強みになると考えています」

(注)IP…Intellectual Propertyの頭文字から取った略称で、「知的財産」の意

「TBS GAMES」 時松隆吉ゲーム開発室長