原体験と対話が支える、温度のある美術表現

ドラマ『未来のムスコ』より

稽古場のセットには、渡邉さん自身の原体験も反映されている。

「この世界を志した当初は舞台美術を目指していました。『舞台人は夢を追えるけれど、活躍するのは狭き門で、それだけで生計を立てていくのは厳しい』と言われ、一度はその道を諦めましたが、当時は多くの劇団や舞台公演でアルバイトをしていました」。その記憶を手繰り寄せながら、稽古場のたたずまいを形にしていったという。

撮影に向けては、撮影部や照明部とも密に対話を重ねた。「稽古場をできるだけ広く見せつつ、稽古エリア以外の要素も入れ込むため、階段の向きや有無などを皆さんと検証しながら決めました」。美術部内の記憶と現場での検証を重ねることで、稽古場は物語に寄り添うかたちで組み立てられていった。

劇中の劇団「アルバトロス」稽古場内にある看板

稽古場のたたずまいに舞台人たちの時間や現実を重ねている本作の美術部。制作現場での検証や対話を積み重ねることで、空間は物語に寄り添う形へと整えられた。そうした対話の積み重ねが、リアリティのある劇団空間を支えている。