拡大するトランプの「西半球」戦略

――その成功体験って言っていいのかどうかわかりませんけど、今はグリーンランドに目標を定めているようですね。

PHP総研 特任フェロー 菅原 出 氏:

国家安全保障戦略で書いてるところのトランプさんは「西半球」という言い方をしていますが、そこは自分たちの勢力圏というか自分たちのある意味、縄張りなので、ここからは敵対勢力の影響力排除するんだっていうことで、その第1弾としてベネズエラをまず、ちょっと体制を変更させて圧力をかけたと。それが成功したもんですから、相当トランプ大統領は勢いづいてしまってるのは間違いないと思います。

――でもグリーンランドの場合はベネズエラと違って、やっぱりヨーロッパがすごく反対していますよね。

PHP総研 特任フェロー 菅原 出 氏:

そうですね。今もスイスでのダボス会議では、グリーンランドの話が一番メインになっていますし、ヨーロッパ勢は非常に反発をしているという状況です。

ただ、トランプさんやアメリカのトランプ政権の高官が言っている「安全保障上軍事的にあそこは大事なんだ」っていうのは一定のロジックはあるんですよね。これ、北極海のところから中国の原子力潜水艦があそこまで来てしまったら、そこからアメリカ本土まで原子力潜水艦からミサイルがもうすぐ届くというところで軍事的な活動を中露にさせないと。

そのためにも、あそこで軍事的なプレゼンスを高めて、中露の影響力を排除するんだっていうのは、一定の合理性があるんですけども、それに対してはデンマーク政府も反対してないんですよ。いいですよと。条約ももちろんデンマークとアメリカの間であって、軍事基地を今も置いてますけども、もっと拡大してもOKなんですよ。それはデンマークもいいですよと言ってるんですけども、その話をあんまりしようとしないで、所有するんだと。そこになんかトランプさん自身がものすごくこだわってしまっているところがある。

――やっぱり資源ですか。

PHP総研 特任フェロー 菅原 出 氏:
資源の魅力というのはあると思うんですよね。といっても氷の下にあるので、そんな簡単な話じゃないんだけれども、だけどやっぱり地理的な優位性と巨大な資源が眠ってるっていうところは、コントロールしたいっていう、そういう何か思惑を相当強く持ってしまっているのは間違いないと思います。

ただ、ヨーロッパ側も簡単に手を引くこともできませんし、喧嘩もできないですから、そういう意味では何らかの落としどころを作っていくんだろうというふうには思います。

しばらく時間はかかるし、そんな強引なことをやるとマーケットに大きな影響が出てきますので、これから中間選挙もある中で当然トランプ大統領そのあたりの影響というのは考えるはずです。今ものすごく高めのハードボールを投げてきていますけれども、どっかで落としどころを探っていくんではないかなというふうに個人的には思っております。

――もう一つ。イランへの攻撃。これは去年成功したわけですよね。

PHP総研 特任フェロー 菅原 出 氏:

まず、2025年の6月にイスラエルとイランが戦争12日間の戦争をして、アメリカもねイランの核施設に攻撃をしたっていうことで、そこから一部止まってる部分があったんですけどもイランとしては、そこでいろんな軍事施設を破壊されたり自分たちのね兵器システムを破壊された。それを少しずつ再構築して、またイスラエルから攻撃されないように、アメリカから攻撃されないようにということで抑止力を高めようということを少しずつ続けていたことは確かなんですよね。

ただ、経済状況は全く改善していないということで、特に去年の秋以降は水不足で、経済的に苦しい状況になっていたということもあって、年末になって抗議行動が始まって、それが今年の年初からも一気に拡大していったということなんですよね。

これまでは、イランで抗議デモが起きた、反政府デモが起きた場合、アメリカ大統領は決してそれを支持するといった発言をしないっていうのをずっと続けてきたのが、今回トランプ大統領は、「頑張れ」と「応援するぞ」とエール送りましたよね。もしイラン政府が暴力的なことをやったら、我々が報復するっていうふうに言ってしまったもんですから、それもあって、抗議デモがどんどんどんどん膨れ上がった。イラン政府とするとですね、内なる脅威と、外からの脅威ともう二重の脅威に直面するっていう、かつてなかったようなそういう事態になってしまったんですよね。 

実はトランプ大統領は軍事攻撃の準備はしていたんですね。一部ではもう本当に24時間以内に始まるんではないかっていうのが、1月の13日とか14日とか。

イランからは、もう当然政府機関の人たちやイギリス政府の人たちもみんな退避していましたので、もう起こる直前まで緊張が高まったんですけども、これ、周辺の国々が止めたんですね。サウジアラビアだとか、カタールだとかが「やめてくれ」と止めまして、イラン自身がですね、今このタイミングでやられたらもう報復するぞっていうことで、アラブの国々やっぱり米軍基地がありますので、「そこを攻撃するぞ」って脅したんですね。そんなこともあってアメリカを説得したと。あと実はですね、イスラエルも止めたんですね。

――どうしてですか。

PHP総研 特任フェロー 菅原 出 氏:

イスラエルは準備がまだ整ってないから今はやめてくれって言ったんですよ。

というのも米軍がですね、戦力がベネズエラの方にずっと行っていたので空母もないし。要するに、同盟国を守ったりイスラエルを守ったりする能力がないんですね。なので、このタイミングでするのはやめてくれっていうことをトランプさんに言って、それで一応止めにしたというのが実態のようですね。