■岸田政権が取り組む子ども政策

ではこれまでに岸田総理が表明した、または検討が進められている政策はどういったものであったか。
▼岸田総理が表明 出産育児一時金を50万円に増額
2022年10日。臨時国会が閉会し記者会見に臨んだ岸田総理は、出産時に受け取ることができる「出産育児一時金」について、現在の42万円から50万円に増額することを発表した。
これに先立ち2022年10月6日、岸田総理は閣議の後に加藤厚生労働大臣と面会。その際加藤大臣は、2021年度の出産費用の全国平均が47万3000円あまりであること、そこに出産時に子どもが脳性まひを発症した場合の補償の掛け金1万2000円を合わせると48万5000円ほどになること ―など、出産費用に関する複数のデータを示した。この数字をベースに、岸田総理は50万円への増額を決めた。
そして、大きく変わるのが出産育児一時金の財源負担のあり方だ。
これまでは主に国民健康保険や健康保険組合などの保険料、つまり現役世代による負担で賄われていたが、政府は今後、75歳以上の高齢者にも財源の7%を負担してもらう考えだ。この転換には、現役世代が子を生み育てるのを、ひろく社会全体で支えるべきという政府のメッセージが込められている。
▼“出産準備金” 10万円相当を支給
2022年10月に政府が決定した「総合経済対策」で、2022年4月1日以降に生まれた子どもに対し、1人あたり10万円相当分の現金もしくはクーポンを支給する方針だ。
2023年9月分までの予算は確保できている一方、10月以降も制度を恒久化して支給できるよう、今後検討が続く。
▼育児短時間勤務の利用者などに給付金
育児休業明けで時短勤務を行う人を対象に、給付金を支給することを検討している。
さらに、現在は一定の要件を満たせば育児休業期間中に「育児休業給付金」を受け取ることができるが、その対象外となっている人(短時間労働者・自営業者など)にも給付の対象を拡大する。
給付金額をいくらにするのかはこれからの議論になるが、「全世代型社会保障構築本部」の幹部は「数千億円から1兆円規模の財源が必要になるのではないか」と話す。
▼産前~産後の親を1:1でサポートする新制度
妊娠中から自宅近くの小児科医院や保育園探し、産後は役所での手続き、すぐに怒涛の予防接種ラッシュ・・・と、心身に負担がかかる中でもやらなければならないことは多い。
その負担を軽減するため妊娠中から子どもが2歳になる頃まで、1人の親に対して1人の“相談員”がつき、面会や電話、無料通信アプリなどでのやり取りを通して、情報提供や必要な手続きの手伝いなどを行う。
“相談員”は有償ボランティアとして子育てを終えた人などを募り、自治体などで研修を行うことを想定している。
そして確実に1:1のサポートを行うために、母子健康手帳を受け取る際などに相談員と顔合わせをできるような体制にできないか模索しているという。
こうすることで支援の漏れをなくし、かつ受け取る親の負担も最小限にすることができる。
(なお、母子健康手帳に関しては今後オンライン化も含め検討が進んでいる)
その際、あわせて子育て用品やサービスに利用できるクーポン券の配布も検討しているという。

2023年4月には「子ども家庭庁」が発足し、厚生労働省や内閣府などに分散していた子ども政策を一本化して進め、さらに少子化対策や子育て支援など必要な政策の司令塔となる。年明けからは、国会でも子ども政策に関する議論がいよいよ本格化するだろう。そして、岸田総理が「倍増への道筋を示す」と言った『骨太の方針』が閣議決定されるのは例年6月だ。
財源の捻出方法について、岸田総理が決断を迫られるのもそう遠い話ではない。未来に責任ある子ども政策を実現し、少子化に歯止めをかけることができるかー。
岸田総理の本気度が問われている。
TBSテレビ報道局政治部サブデスク 難波澪

















