様々な社会問題について調査、研究を行う民間のシンクタンクによると、2033年には全国で住宅の3軒に1軒が空き家になると指摘されるほど、問題は年々深刻化しています。石川県内の自治体でも空き家の解消に取り組む動きが活発化しています。

加賀市片山津温泉に今月12日にオープンした飲食店「創作おばんざい寿々」。

築およそ50年の空き家がリノベーションで大幅に改装されました。オーナーはおよそ40年の経験がある料理人の山井鉱寿さんです。


山井さんは加賀市が空き家の利活用を促すため、今年6月から募集した「空き家リノベぐらんぷり」で優勝し、補助金500万円を使って空き家を飲食店に改装しました。店では昼は定食を、夜は居酒屋メニューを提供し、山井さんは温泉街の賑わいに一役買いたいと意気込みます。

オーナー山井鉱寿さん
「もっともっと片山津に新しい店がオープンして街が賑わえばと。加賀市に食べにくるというのは市外の人だとあまりないと思うので、少しでもそういうふうになればなと思います」

加賀市大聖寺地区。

改装工事が進められているのは明治時代に建てられた町家です。加賀市はかつて城下町だった大聖寺地区の伝統的な建物を残そうと、2006年から町家の再生事業に取り組んでいて、対象となるのは昭和30年以前の建物です。

550万円を上限に市が改装費用を補助し、これまでに制度を活用して再生された建物は29軒に上っています。

加賀市建設部 南出直樹さん
「新しい家ではなくて町家だと親しみやすいとか、昔からの大聖寺の落ち着いた静かな雰囲気を残すこと、これはほかではない景観の特徴かなと」

山井さんと同じく「空き家リノベぐらんぷり」で優勝したのが、荒川香織さんです。山代温泉で先月25日、人気の雑貨店「AIUE0(アイウエオ)山代温泉店」をオープンしました。

AIUEO山代温泉店 荒川香織オーナー
「銭湯に毎日入りに行くおじいちゃんおばあちゃんとか若い人とか。地元の人はたくさんいて、ホテルの中に沢山人は泊まりに来ているから、どこか寄る場所があるといいなとすごく思って。AIUEOのかわいい雑貨と飲み物を飲めるような場所があると、よりみんな楽しめるのではないかと思います」


加賀市が昨年度行った調査によると、市内にある空き家の数は1,501件で、そのうち利用可能な建物は6割近くあるということです。

加賀市産業振興部 山田圭一部長
「モデルになるような成功事例を皆さんに示すことによって、空き家の利用を促進できないかなと思っています。地域と一緒に事業を継続して、長い間続いていけるとありがたいなと」

放置すれば、地域の安全やコミュニティーづくりへの支障も懸念される中、空き家の問題解決は人口減少時代を迎えた今、将来のまちづくりに重くのしかかります。