161人が亡くなった香港のマンション火災から、あすで1か月です。延焼が拡大した原因ともされる防火基準を満たしていない保護ネットが、ほかの現場でも使用されている実態が見えてきました。

先月26日に発生した香港のマンション火災。これまでに161人が亡くなり、いまも6人と連絡がとれていません。

出火当時、火災報知機が作動せず、気付くのが遅れた人も多くいました。

マンションの住人 尹さん
「窓を開けて外を見たら、白い煙が流れてきて、絶対に火事だと思った。火災報知機は鳴りませんでした」

尹さんは、あの日、着の身着のまま逃げたといいます。

幼いころから暮らし、結婚後も住み続けていた住居を失い、避難所での生活を強いられました。10日ほど前からは、政府が手配した臨時住宅に移り住んでいます。

料理人だった尹さんですが、いまも仕事に復帰できず、政府や民間団体からの支援金が頼りです。

マンションの住人 尹さん
「自然とあの火事のことを思い出してしまいます。元の場所に戻って住めるなら、もちろん戻りたいです」

一方で、あのマンションでは…

記者
「修繕工事で使われていた竹やネットを取り外す作業を行っています」

被害を拡大させたとされる保護ネットの撤去作業がおこなわれていました。

当時、修繕工事中で、一部の保護ネットが防火基準を満たしていなかったことがわかっていて、これに関連して、これまでに16人が逮捕されています。

香港の建設会社で現場管理をおこなう男性に保護ネットをめぐる実情を聞くことができました。

香港の建設会社で監督管理をする男性
「(Q.防火基準を満たさない保護ネットは他の現場でも使われている)半々です。多くの利益を得るために不正をするのです。(Q.基準を満たすか満たさないかで価格が違うか)約3倍違います」

一方で、防火基準を満たしていなくても「合格」と記載された“偽の証明書”が添付されているケースもあると話します。

香港の建設会社で監督管理をする男性
「(基準に合格か不合格かは)購入する業者にも分かりません。時にはネット上で購入することもありますから。(Q.他の現場で起きてもおかしくない)おかしくありません」

こうした事態を受け、香港当局はすべての修繕工事現場から保護ネットを撤去する方針を明らかにしています。また、建設現場へのたばこの持ち込みが禁止され、喫煙した場合には、違反者はその現場から永久追放されるというルールも設けられたといいます。

香港政府は出火原因などについて、9か月以内に報告書をまとめるとしています。