消火活動中の隊員2人が亡くなった今年8月の大阪・道頓堀のビル火災。大阪市消防局は25日、調査の中間報告を公表した。

火が建物沿いに燃え上がり、室内でバックドラフトが発生、隊員の退路が断たれた詳細がありありと推定されたいっぽう、そもそもの出火原因は、なお調査中だ。

中間報告によると、火の広がり方は以下のような過程だった。

■屋外看板に延焼壁面這うように

・8月18日午前9時45分ごろ、大阪市中央区宗右衛門町の道頓堀川に面した7階建て(東側建物・西側建物がある)西側の敷地内、地上付近で出火。

・雑品が燃焼、付近のエアコン室外機が火炎に晒されて燃焼を助長。そして屋外看板と、看板が設置される木製の工作物にも延焼した。

・火炎は壁面を這うように上方へ伸び、急速に垂直方向へ広がる。西側の屋外看板の背面にあったエアコン室外機にも延焼、複数の屋外看板を燃焼させ、西側建物から東側建物の屋外看板に延焼した。

■エアコン落下して室内へ火炎バックドラフト発生へ

・東側建物の5階の窓は火炎で焼損した。さらに窓に設置されていたウインドエアコンが焼えて室内に落下、これで室内へ火が移る。

・窓から入った火は、机や書類などの可燃物に広がって急激に火勢が増大。そして燃焼により酸素が急速に消費されて、室内で一時的に燃焼が収束する状態に…。

・その5階に消防隊が入った。扉を開放した時に外部から新鮮な空気が流入。酸欠状態にあった室内に急激な燃焼現象が発生した。(バックドラフト)

・5階では強烈な火炎と黒煙が噴出。室内階段を経路として6階へも延焼。その結果、建物の5階及び6階の床面積105平方メートルなどを焼損したという過程だ。

消防は、現場が危機的状況に陥り、退路が断たれ脱出できなくなり、2人の発見救出に時間を要した、という3つの段階に分割して、要因を判断した。

■危機的状況に陥った要因南側の危険性の認識は乏しかったか

建物南側(道頓堀側)では、看板沿いに延焼が急速拡大していたが、中間報告では、小隊は建物北側からの進入で南側の危険性が乏しく、リスク予測にも限界があったとしている。

■脱出できなかった要因

亡くなった2人の消防隊員は、6階で活動していた。脱出できなかった要因について中間報告は、『退路としていた室内階段から火・煙・熱が流入したことで、6階は瞬時に濃煙熱気となり、視界喪失や身体的影響が発生。特に高温による身体的影響から、脱出することができなかった』としている。

■救出に時間を要した要因

バックドラフトは午前10時13分頃に発生。隊員の発見救出が午後0時10分頃になったなど、時間を要したことについては、『活動場所に関する情報伝達が十分でなく、所在誤認や情報錯綜から救出アプローチが遅れた。』とし、無線や現場指揮命令系統の課題や、熱気による進入の難しさも挙げている。

■シミュレーションで検証

大阪市消防局は、現場検証や動画分析のほか、シミュレーションの結果バックドラフトが現象したと判断。一方、条件の不確かさを考慮する必要があるとしている。

■燃焼実験でエアコン室外機の影響

このほか燃焼実験により、エアコン室外機の内部の油分が熱で気化し引火することで、火炎の拡大にも影響することが示唆されたという。