乳がんで乳房を失い、生きる希望を失ってしまう女性もいる中、富山県では乳房を再建する手術が多く行われています。全国から患者が訪れる手術のスペシャリストと、自分らしく生きることを取り戻した女性の姿を追いました。

富山大学附属病院。再建手術を3週間後に控えた愛知県の30代の女性が診察に訪れました。女性は去年、乳がんのため右胸を全摘出しました。

富山大学附属病院 形成再建外科・美容外科 佐武利彦 医師
「とる場所なんですが、お尻の上側をとります。250~300グラムの脂肪を乳房の形になるように」

30代女性
「いざ手術して摘出した姿をみて、より再建したいなという気持ちになりました」

女性は人工物による再建を予定していましたが、傷跡の硬さから断念。腹部や臀部など自身の組織を移植する「自家組織法」を選択し、乳房再建のスペシャリスト佐武利彦医師に希望を託します。

富山県砺波市出身の佐武医師。佐武医師の高い技術を求め、今も全国から患者が訪れています。

佐武利彦 医師
「(胸を失う)喪失感というのはすごく強いので、それを再建することによって、ただ形を作るだけではなく、その後の生き方を変えるぐらいのパワーを持った治療」

しかし、日本では乳房摘出後に再建手術を受ける人はわずか1割。医師不足などが背景にあり、再建できることを知らない人もいます。

そんな中、富山県は乳房を再建する人の割合が全国2位を誇ります。

乳腺外科や形成外科などがチームを組む富山の体制を、佐武医師は全国に広げたいと願っています。

佐武利彦 医師
「乳房を失くしたことで困らない患者さんが増えていくんじゃないかなと」

手術当日、お尻の脂肪を血管ごと移植し、胸の血管とつなぎ合わせる高度な『自家組織法』の手術が行われました。手術は6時間に渡りました。

佐武利彦 医師
「血管の大きさがお尻と胸では全然違うので、太さの違いが生じないようにつなぐ操作がちょっと難しかったが、今のところはちゃんとできてると思います」

術後一週間、患部に温かい感触が戻り、女性の顔に笑顔が。

30代女性
「自然で触れると温かみもあって、自然な胸ができててうれしかった。やっぱりやってよかったなって今は思っているので、それは伝えたい」

自分らしく生きる力を取り戻す「乳房再建」。支えてくれた医師とともに、女性は再び前を向いて歩き出しました。