今年で40周年を迎えるコンサート「サントリー1万人の第九」に今年、高知から土佐女子中学高等学校のコーラス部がリモートで参加しました。中高生にはハードルが高いといわれる第九。果敢に挑戦するコーラス部員たちを取材しました。
1947年に創部し、70年以上の歴史を誇る土佐女子中高等学校コーラス部。本番前日の練習を取材するため音楽室を訪れると…
全員、体操服姿で体幹トレーニングの真っ最中でした。
それにしてもなかなかキツそうです。
(どこを鍛えているんですか?)
「腹筋ですね」
発声の前に40分ほどのトレーニングメニューをしっかりこなすのが日課です。
「サントリー1万人の第九」は1983年から毎年12月の第一日曜日に大阪城ホールで開催されています。一般からの募集などによって1万人規模の合唱団を結成しているのが特徴で、コロナ禍では寄せられた動画やリモートでの参加を活用しコンサートを行っています。
土佐女子中・高校では参加者を募る主催者側の呼びかけに応じる形でリモートでの参加を決め、練習を重ねてきました。”1万人の合唱”という未知の舞台に臨むのは28人。音域の広さ、音程の高さ、ドイツ語歌詞といったいくつものハードルがある第九は中高生にとっては難しい曲です。
「やばいです」
「(最高で)50人とかしかやったことない。1万人は桁違い!全然違う」
不安を口にする部員たち。でも、どうやらみんなで歌える楽しさの方が大きいようです。
(カメラマン:それ、それ何ですか?)
「お気に入りのパートの真似、体で」
(合唱ってみんな楽しいですか?)
「楽しいです」
(みんな合唱のどんなところが好きなんですか?)
「ハモリ?」
「ハモリがね」
「気持ちいいよね」
「だって音が違うのにさぁ一緒になったらハモるがですごいよね」
「めっちゃ綺麗やし」
1万人の第九に参加する部員の中には、引退したはずの部員も。たった一度の高校生活をコロナ禍で過ごした3年生です。
(3年生 岩松奈優さん・大畑恵都さん)
「修学旅行は私たちの学年は中止になりました」
「文化祭は中止になったのが2年生になってあって、高校2年生の時の運動会が中止になりました」
(3年生 彼末花さん・中脇綾音さん)
「唯一ウェブの形で出演させてもらった行事があってその時に歌えたことがすごくうれしかったのでやっぱりこの状況でも『歌える時は楽しもう』って『お互い10人この学年で支えあっていこう』って」
顧問の田村歌穂さんは、コロナ禍の中、前を向き続けた高校3年生部員への思いが、参加を決めた大きな理由の一つと話します。
(コーラス部顧問 田村歌穂さん)
「大会ってすごく濃い時間なのでそれが完全になくなったっていうのはすごい生徒と一緒にショックを受けましたね。特に今年の子たちは私が勤めだして6年間教えている子なので、一緒に何かやりたいなぁという思いもありました」
(3年生 小松華乃さん)
「最後にすごい大きなのがきたなっていう気持ちです」
(3年生 中脇綾音さん)
「人数もいた方が楽しさも倍になるし『コーラス部を続けててよかったな』って思ってます。最高の思い出にしたいです」
いよいよ本番当日。大阪城ホールとリモートでつながっている学校のホールに、28人がスタンバイします。
みんな、緊張しているのかと思いきや・・・
(みなの笑顔シーン)
みんなと一緒に歌えるうれしさでいっぱいのようです。
「変になってもわからんなってもずれても歌えなくなっても焦らずしっかり歌いきったらえい。高3生最後なので思う存分歌ってください。しっかり前向いてね」
ほかの参加者の画面や寄せられた動画などが会場の大型ビジョンに映し出されます。
リモートでの合唱のため指揮者の姿が見えづらく、会場とコーラスのタイミングをうまく合わせられるか、少し心配です。
ベートーベンの交響曲第九番、「第九」は第一楽章から第4楽章まであり、1時間を超える交響曲です。今回のコンサートでは最初に第一楽章から第三楽章までを、世界で活躍する佐渡裕さんが指揮するオーケストラと、ギタリスト布袋寅泰さんがコラボし、スペシャルアレンジで披露しました。
そして、いよいよ第4楽章です。3年生にとっては最後の舞台。ほかの部員たちにとってもこのメンバーで歌う、最後の舞台です。
(合唱音)
部員たちはそれぞれの思いを胸に歌声を響かせました。
(3年生 中脇彩音さん)
「すげぇ最高の思い出になりましたね!ありがとうございました」
(2年生 田辺紗來さん)
「(3年生がいてくれて)とても心強かったし楽しかったです。すごい貴重な時間を過ごしてとてもよかったと思います。」
(3年生 上野碧依さん)
「これが終わってコーラス部としての活動はもうないので後輩たちもこれからもがんばってほしいです」
(3年生 彼末花さん)
「こんな機会はないと思うので今後一生の思い出に残ると思います」
(コーラス部顧問 田村歌穂さん)
「生徒たちもすごく喜んで後輩もひさしぶりに高3生と歌えて楽しそうだったのですごくいい時間だったなと思います」
1万人での合唱というまたとない大舞台に向けて、みんなで心ひとつに取り組んだ日々は、彼女たちにとってかけがえのない財産となりました。