5億110万円。
これは11月末までに新潟県内で起きた特殊詐欺事件の被害額で、去年1年間の2億8000万円余りを大きく超えています。
なぜ騙されてしまうのでしょうか。90万円を騙し取られた70代の女性が犯人の巧妙な手口を語ってくれました。
【被害女性(79)】「周りから子どもからも詐欺に気を付けてって言われていたし、自分も絶対に詐欺に遭わないと思っていました」

こう話すのは新潟市中央区に住む79歳の女性です。10月のある日、自宅に1本の電話がありました。
【息子を名乗る男】「母さん、俺カバンなくしちゃって」

離れて暮らす息子を名乗る男は「東京駅でカバンをなくした」と話しました。
およそ10分後には駅員を名乗る男から電話が…
【東京駅員を名乗る男】「息子さんのカバンは駅構内のゴミ箱から見つかりました」

女性が、息子を名乗る男にカバンが見つかったことを伝えると…
【息子を名乗る男】「カバンの中にあった通帳と携帯は盗まれていた。犯人が携帯を持っているから絶対に電話をしないで」

女性は声に違和感があったものの、慌てているためだと思ったそうです。
その後、男はこう切り出しました。
【息子を名乗る男】「母さん金を貸してくれないかな。いくらくらい出せる?一度に多額の金を引き出すと怪しまれるからうまくやってよ」

「仕事で内金(うちきん)を払う必要がある」そう言われ、郵便局で現金90万円を引き出してしまったのです。

【被害女性(79)】「自分が苦しいのはいくらでも我慢できるけど、子どもの悲しみは身代わりになりたいと思ったもんですから。子どもが苦しんでいるんだったら何でもしてやりたいと思ったんです。母親というのはいつまでたってもこんな気持ちなんでしょうかね」

その現金は息子の友人を名乗る男が自宅近くまで受け取りに来ました。

その際、男が電話で誰かと話していたため女性は不審に思い、一度現金を返してもらったそうです。するとそのタイミングで息子を名乗る男から電話が…
【息子を名乗る男】「母さん、その人はいい人なんだから金を渡して」

その言葉を信じ、現金を渡してしまいました。
【被害女性(79)】「後で考えたら絶対あり得ないことですよね。子どもが見ていないことなのに。そんなにちょうど良い具合に電話が来ること自体が…」
その後女性は息子の妻に電話をかけ騙されたことに気付いたそうです。

【被害女性(79)】「『息子だ』って言ったら息子に先に電話してみるとか、その家族に今自分の息子が『どこにいるの?』って場所を聞いたほうがいいんじゃないかなと」
警察はこの事件に関与した疑いで東京都三鷹市に住む無職の男ら3人を逮捕しました。

【被害女性(79)】「私と同じような立場の人をつくらないようにしてほしいと思います。自分(犯人)にも親がいることでしょうし、親がどんな気持ちでいるかというのをちょっとばかり考えてほしいなと思います」

警察は電話で金を要求された時は一度電話を切って警察や家族と相談してほしいと呼び掛けています。
