“次に挑む表現”――各スタッフが語る未来と、『フェイクマミー』で得たもの

金曜ドラマ『フェイクマミー』美術セット(茉海恵の自宅マンションのLDK)

今後挑戦したい表現について、3人のクリエイターはそれぞれの視点で語る。
太田さんは「CMでは描かれることが少ない、人が死ぬような重いシーンや、ベッドシーンなど感情が大きく動く場面を手掛けてみたい」と話す。

一方で、撮影現場では、出演者の表現に驚かされる瞬間も少なくない。片村さんは「この配役でCMを撮ってみたい」と語り、特にもう一人の主人公・日高茉海恵(川栄李奈)の1人娘・いろはを演じる池村碧彩さんの集中力を高く評価する。「『1時間読んで、1時間休む。それを繰り返してセリフを覚えている』と聞いて。同じ年頃の子どもがいる身として驚いた」と明かす。

金曜ドラマ『フェイクマミー』より

ジョン監督も「第9話のいろはの芝居は特にすごかった」と振り返る。現場で俳優の成長や力量を目の当たりにすることは、次の作品への課題意識にもつながっている。

そんな中で片村さんは、「写真でも映像でも、碧彩ちゃんを主軸にした作品を撮ってみたい」と興味を示す。

ジョン監督は「ジャンルに縛られず、恋愛、ミステリー、家族ドラマなど幅広く挑戦したい」と明かしながらも、「何よりも『出ている役者さん全員が輝いているね』と言われる作品を作れたらいいなと思います」と語る。

その中で、『フェイクマミー』で最もこだわった点として“テンポ”を挙げる。「昨今は2倍速で見る人が多い。だからこそ、2倍速では追いつけないテンポや間を作りたかった。特に第1話はテンポ感を大事にしました」と語り、シーン順の入れ替えによって視聴者の理解度とテンポ感を両立させた場面も。

また、編集の柳沢さん、音響チームのゼロウェイブ(谷口さん・水口さん)、そして撮影・照明の両名という“いつものチーム”がいたことで、「やりたいテンポを即座に理解し、形にしてくれた」と振り返る。

金曜ドラマ『フェイクマミー』より

作品を支えるのは、単なる“チームの仲の良さ”ではない。演出・撮影・照明、それぞれの立場から俳優の芝居を最大限に生かすための判断が積み重なり、日々の現場が形作られている。そこにこそ『フェイクマミー』をはじめとする、彼らが手がける作品が持つ独自の映像表現の核がある。