日本被団協がノーベル平和賞を受賞して12月10日で一年です。被爆者らは受賞後も核のタブーを伝え続けた一方、世界では核への依存に歯止めがかからず。核兵器廃絶への道筋はいまだ見通せないのが現状です。

山口 仙二さん国連スピーチ「命のある限り、私は訴え続けます。ノー・モア・ヒロシマ ノー・モア・ナガサキ ノー・モア・ウォー ノー・モア・ヒバクシャ」
核兵器が何をもたらすのかをその存在と、証言で示し続けてきた被爆者たち。

日本被団協のノーベル平和賞受賞は、核兵器が二度と使われてはならないことを改めて世界に伝えました。受賞に力を得て始まった被爆80年。

長崎原爆被災者協議会・田中 重光会長(85)「核兵器をなくしていく。核のタブーをもっともっと強くしていく。そういう年にしていきたいと思います」かつてない注目と期待が寄せられる中、被爆者らはこのチャンスを逃すまいと、これまで以上に動き、声をあげてきました。

しかし、トランプ氏が再び大統領に就任したアメリカは、6月、「核の脅威を阻止する」としてイランの核施設を攻撃。トランプ大統領「あの攻撃が戦争を終結させたのです。広島や長崎をたとえにしたくはないが、本質的に同じもので、あの攻撃が戦争を終結させた」

強大な逆風に「核のタブー」はかき消されそうになっています。

長崎原爆被災者協議会・田中 安次郎理事(83)「毎日毎日動いてるんですけど、なかなかね、思うようにいかないですね」

長崎原爆被災者協議会・城臺 美弥子理事(86)「失望失望ですよ。いくら私たちが叫んでも何の動きもないし、日本政府が」

長崎原爆被災者協議会・田中 重光会長(85)「いまの国際情勢を反映してね、やはり、なかなか難しい面もあるなと思います」

核問題の専門家は、ノーベル賞受賞で核の非人道性に光が当たった一方で、核への依存を高める論拠にもされてしまったと指摘します。

長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)中村 桂子准教授「(核兵器が)いつ使われるかわからない、だから自国の防衛をもっと高めていこう。全く異なる結論に結びつける議論が、いま当たり前のように出てきてしまっている」

その上で、来年も核兵器をめぐる国際条約の運用検討会議が開かれるなど重要な年であることから、あらゆる手法でアプローチを続けることが重要としています。

中村准教授「世界の動きに関与していく道筋みたいなものはしっかりまだあるわけです。なので、そうした糸を手繰りながら、無力感を私たちが感じたり諦めたりすることなく、関与の道筋をつくっていくということも大事」