2026年は投手本格復帰でサイ・ヤング賞にも挑戦へ

大谷にとってサイ・ヤング賞など個人タイトルが狙えるほどの本格的な投手復帰、そして勝負の年は2026年になる。ワールドシリーズ第3戦の延長11回の走塁時に右脚のけいれんを発症しながら出場を続け、さらに翌日の第4戦に先発登板。下半身をかばって投げて肩肘に負担がかからないか、気が気ではなかった。

一方、第3戦の前日会見では規定投球回に唯一達した2022年でさえ「どこか思い通りにいかないなという違和感がありながら投げたりしている時期もあった」とも語り、現状には「今はそういうことはなく、本当に自分のやりたいように体がついてきている」と語るなど、投手・大谷の天井はまだ見えないから末恐ろしい。

イチロー氏は19年3月の現役引退会見で大谷について「投手として20勝するシーズンがあって、その翌年に50本打ってMVPを獲ったら化け物ですよ。サイ・ヤング賞の翌年には本塁打王。そんな可能性ある選手、この先に出てきますか?」などと話していた。その「化け物」は昨季54本塁打、今季は自己最多55本塁打で3年連続4度目のリーグMVPを全て満票受賞した。

開幕から万全の二刀流で迎える来季はチームとして3連覇、個人としては山本と争うことが期待されるサイ・ヤング賞とMVPの同時受賞が現実的な目標となる。「来年はもちろん頭からいくつもり。先発投手としてしっかり一年回るのが目標」。5年間でMVPを4度受賞し、22年も次点。バリー・ボンズに並ぶ歴代最多7度受賞まであと3度、その先の4度も決して夢ではないだろう。

WBC2連覇、ワールドシリーズ3連覇へ

MVP受賞から約2週間後の11月24日には来年3月の第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する意思を自身のインスタグラムで表明。日本ハム時代の17年の大会直前に右足首痛で参加を断念したことを振り返り、「前回初めて出場したけど、それまでいろいろなタイミングで出場できなくて。(出場)したいなって気持ちと裏腹にできてはいなかった」と語った。

前回大会は投打で日本代表をけん引し、決勝・米国戦で抑えも務めるなど優勝に貢献しMVPに輝いた。

06、09年以来、2度目の連覇へ「前回以上に来年のWBCも素晴らしくなるのではないか。選ばれること自体光栄なことなので楽しみにしたい」と笑みを浮かべた。

注目の二刀流出場の可能性については「投げたパターンと投げないパターンで、何通りかプランは持っておくべきだと思う」と自身の考えを説明した。

今季は打者出場を続けながら、マイナー登板なしでメジャーで投手復帰する異例のリハビリプログラムをやり遂げた。来季の照準は二刀流を一年間完遂すること。大谷の言う〝投げないパターン〟は、大会中はDHに専念し、練習で「ライブBP(実戦形式の打撃練習)」登板などを複数回こなしてメジャー開幕に臨むプランとみられる。

〝投げたパターン〟では何かしら制限がかかる可能性はあるが、WBCで二刀流プレーし、投打で世界一を目指す。いずれにせよ2年連続で異例の試みとなるが、「ドジャースと話しながら開幕に向けてどう入っていけばいいか、そのプランに沿って選んでいけばいい」と力を込めた。

WBC2連覇、そしてワールドシリーズ3連覇なるか。大谷はいつだって想像を超えてくる。26年シーズンも信じられないような結末が待っている気がしてならない。

〈執筆者略歴〉
柳原 直之(やなぎはら・なおゆき)
1985年9月11日生まれ、兵庫県西宮市出身。
関西学院高等部を経て、関西学院大学では準硬式野球部に所属。
2008年、三菱東京UFJ銀行入行。
2012年、スポーツニッポン新聞入社。遊軍、日本ハム担当を経て2018年からMLB担当。大谷翔平を取材して来季で13年目を迎える。
著書に『大谷翔平を追いかけて 番記者10年魂のノート』(ワニブックス)、『大谷翔平への17の質問—取材現場で記者はどんな葛藤と戦いながら質問をするのか—』(アルソス)がある。

【調査情報デジタル】
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