福島県内で長く愛されている老舗の今を伝える「老舗物語」。今回紹介するのは老舗の眼鏡専門店です。木のぬくもりを生かしたオリジナルの眼鏡づくりや、街ににぎわいを取り戻す取り組みなど次々と新しい挑戦を続ける5代目の姿を追いました。

福島市大町の県庁通り。この通りで、長年街の移り変わりを見守ってきた店があります。「OPTICAL YABUUCHI」。店内には、国内外から選び抜かれた眼鏡が並びます。

--藪内義久さん(OPTICAL YABUUCHI 5代目)「(眼鏡は)元々矯正として使う道具だったのが、今はファッションの方にも寄ってきているので、身に着けるジュエリーみたいな感覚だともはや思うんですよね。」

そう語るのは、5代目の藪内義久さん。

創業は明治8年。

--藪内さん「最初は時計店や貴金属を販売していて、その後業態を変えて眼鏡屋になっていた。」

時計店として始まったこの店は、時代とともに姿を変え、眼鏡店に。今年150周年を迎えました。

ずらりと並ぶ、細部にまでこだわった眼鏡の数々。中には、1930年代のビンテージフレームも。

--藪内さん「眼鏡をかけた時に、楽しくなるようなとか。そういう細かいところまで考えられている物を僕達は仕入れたいですよね。」

さらに、こんな特別な眼鏡も。

--藪内さん「全部木で作った眼鏡です。金属も使っていない。ねじもないし、接着剤も使っていない。」

藪内さんが自ら手掛けるブランド「COYA」。選んだ木を丁寧に削り出し、眼鏡の形へと仕上げていきます。

--藪内さん「木からくり抜いていくんですよ。厚い木があって、全部くり抜いて。難しい。一発勝負なんで、割れたら終わりだし。木の特性とか曲木の技術とかも必要で。」

木の質感や温かさがそのまま宿る、まさに唯一無二の眼鏡です。(※現在は受注停止中)

薮内さんのこだわりは眼鏡だけにとどまりません。店の奥へと進むと…雑貨コーナーが広がります。

--藪内さん「ライフスタイルというか、僕らが提案したいものが眼鏡の他にもあるので、それを見ていただけたら。」

生活の道具や暮らしを彩る小物たちが静かに並ぶこの一角は、まるで小さなギャラリーのよう。

--藪内さん「眼鏡屋さんってそれを目的に行くだと、それしか用事がないから。雑貨見に来たでもいいし、街に遊びに来て面白そうだからちょっと入ってみるかっていう感じでも全然嬉しいですね。」

藪内さんが店に携わるようになったのは2004年。

--藪内さん「僕は2階を任せてもらって、セルフビルドで4か月ぐらいかけてお店作りした感じです。」

それから10年以上かけてビルの空き店舗をリノベーションし、テナントを誘致。ニューヤブウチビルには、レコード店「リトルバード」や、野菜中心のメニューが評判の「食堂ヒトト」など、魅力あふれる店舗が集まっています。

そんな自分の手で空間を作り上げた経験は、“街”へと視線を広げていくきっかけに。店舗向かいの4階建てのビルを買い上げ、去年、「ノノトリビル」として再生。現在は、カフェや洋服店など、8つの店舗が賑わう空間になっています。

--藪内さん「こうしたらいいのになっていう構想がずっとあったんで。1階だけじゃなくて、上まで伸びていくような街並みにしたいと思っていた。」

さらに、今年10月には、創業150周年を記念したイベントを開催。県庁通りの一角を歩行者天国にし、食や雑貨、アートなど、県内外からおよそ35の店が集まりました。

--藪内さん「イベントって打ち上げ花火的なところはあるけれど、継続すれば話が別になってくると思うので、どういう形で残してけるか分からないけど、続けていきたいですね。」

藪内さんが描くのは、次の世代へつながる県庁通り。店が増え、人が集まり、その賑わいが街全体へと広がっていく未来です。

--藪内さん「親父がよく言っていたのが、(昔、県庁通りは)ぶつかり合うほどの人通りだったって。それをもう1回作りたい。ここにしかないサービスを提供できるお店の人達は宝だと思っている。それを見た若い子達が将来ここら辺でお店出したいと思ってもらえるようにしたい。」

かつての賑わいを、もう一度。藪内さんの挑戦はこれからも続きます。

『ステップ』 
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2025年12月日放送回より)