「生きて帰れないかと…」取材で見えた被害の実態

高柳キャスター:
少女の出身の村も取材したとのことですが、どのような話が聞けましたか。

竹本真菜 記者:
少女が生まれ育ったのは、首都バンコクから車で約5時間ほどの場所にある、北部の農村です。主な産業はコメ・サトウキビの栽培で、約200世帯が暮らしています。

私たちはこの村への取材の中で、少女の祖父母や親戚に話を聞くことができましたが、その中で重要な点が見えてきました。

その1つが、少女の母親は海外に出稼ぎに行くなどして、一人で生計を支えていたということです。ただ、母親が仕事を見つけた方法はわからないということでした。

また、私たちはこの村に住んでいる方にも取材をしました。その村人の一人から、「この村では多くの人が海外のマッサージ店で働いている。ロシアや韓国に行く人が多い」という気になる証言を得ました。

この村では、少女の母親と同じように多くの人が海外に出稼ぎに行って、暮らしを支えている現状が見えてきました。

高柳キャスター:
タイの女性の支援団体も取材をしたということですが、そこではどのような話を聞くことができましたか。

竹本真菜 記者:
村への取材で、多くの人が海外に出稼ぎに行っているという実態が見えてきたため、出稼ぎの実態をより詳しく知るために、タイの女性支援団体に取材をしてきました。

支援団体によると、タイのSNSには「家政婦の仕事」や「マッサージの仕事」ということで、多くの海外の出稼ぎの求人が掲載されています。

ただ同時に、こうした出稼ぎの求人が人身取引のきっかけとなるケースが後を絶たないということです。

今回私たちが話を聞くことができた女性のケースでは、普通の海外のマッサージの仕事ということで求人に応募しましたが、現地に向かう途中で、ブローカーから急に「性労働をしてもらえないか」と連絡を受け、そのまま意に沿わないかたちで性労働をせざるを得ない状況に追い込まれてしまったということです。

また、客の相手をする際に、違法薬物を使わされた例もあるということで、この女性は「性労働の仕事と知っていたら、仕事に応募しなかった。もう生きて帰れないかと思った」と話をされていました。

支援団体によると、海外の出稼ぎとして人身売買の被害に遭う女性は本当に後を絶たず、その行き先は、ドバイ・ミャンマー・マレーシア・韓国・オーストラリア・日本なども含めて、世界中で被害に遭っている女性がいるということです。