突然の電話「息をしていない」
2019年7月9日、熊本県にいた深迫祥子さんのもとに、長男の忍さんの携帯電話から着信がありました。受話器を取ると、聞こえてきたのは忍さん(当時29)の声ではなく、職場の男性の声でした。
(職場の男性)
「お母さん、忍が救急車で運ばれたんです。すぐ病院に来てください」
深迫さんは最初、忍さんがちょっとやんちゃな振る舞いをして骨折でもしたのかと思い、笑いながら答えました。
「また、なんかやっちゃったの?」
しかし、職場の男性は続けて言いました。
「息をしていない」「死んだ」
その3日前の7月6日に、忍さんと最後の電話をしたときのことを、深迫さんは今でも鮮明に覚えています。熊本でコーヒーショップ開店の準備を進めていることを報告すると、息子は嬉しそうに話を聞いていました。
翌年、30歳になる節目に故郷に戻り、恋人とともにバリスタとして新たなスタートを切る予定でした。
「母さん、帰ってくるときには気をつけて帰ってきてね」
これが、母と子の最後の会話となりました。














