10日の参議院本会議で、旧統一教会の被害者救済を目的とした「被害者救済法案」が可決されました。
 関連団体の被害にあった男性は、新たな法律の成立を複雑な思いで受け止めています。

参院本会議
「本法案は可決されました」

 被害者救済法では、霊感などで不安をあおりながら寄付を勧誘する行為や、寄付のために借金させることなどを禁じ、罰則も設けています。
 新たな法律に期待を寄せる北海道苫小牧市の高倉信幸さんです。
 大学時代に、旧統一教会の関連団体「原理研究会」に入会し、そこで受けた精神的被害に40年間悩まされています。

高倉信幸さん
「瀬戸際にいる人たちは、はっと気がついて、今回の法案で救われるかもしれないが、時間がかかる。本当に信じ込んでいる人は、どんな法案ができてもやめないと思う。そこが、一番の問題」

 高倉さんは、新たな法律を歓迎しながらも、精神的被害を受けた人の救済は対象外だったことに肩を落とします。

高倉信幸さん
「精神的な被害の救済を求める僕みたいな人が、うずもれていると思う。(精神的被害は)証明が難しい。証明が難しいから、今回全く入ってない。国も動いてくれているが、精神的な被害を受けた人に関してもフォローしてほしい」

 声を上げることができない埋もれた被害者を救う、より実効性のある法整備を強く望んでいます。
 北海道大学の櫻井義秀教授は、寄付金の規制法案が短期間で可決されたことは評価するとしながらも、課題も多いと指摘します。

北大 宗教社会学 櫻井義秀教授
「旧統一教会で問題とされてきた、正体を隠した勧誘・布教自体は禁じていない。寄付金を要請したときの配慮義務・禁止事項で、布教のやり方については何も言及していない」

 布教活動に制限の目安を設けることは、政教分離や信教の自由に関わることで難しいといいます。
 さらに。

北大 宗教社会学 櫻井義秀教授
「寄付をする際に領収証や受取書を渡していないという問題がある。被害の事実・金額を確定できない」

 証拠のない訴訟を強いられる弁護士からは、「非常に使い勝手が悪い」という声も出ていると話します。
 岸田総理は新法成立後の会見で、「被害者がこの制度を利用しやすい環境を早急に整備することに全力を傾ける」とコメントしています。